こんにちは。
以前簡単にはしりだけ紹介した「シリアスゲーム」について、今回はその1事例を紹介していきます。
3rd World Farmer(第三世界の農民)
今回紹介するのは「3rd World Farmer」というシリアスゲームです。
タイトルは「第三世界の農民」という意味で、その名の通り、発展途上国の農民になる農場経営を行うシミュレーションゲームです(英語)。
プレイヤーは発展途上国の農民となって、作物を植えたり家畜を飼ったりして収益を稼ぎ、自己の農場を拡大・経営していきます。最終的に政治家の庇護を得て「収穫保険」を獲得することでゲームクリアとなります。
と、ここまで聞くと「なんだ。普通の農場経営シミュレーションか」と思うかもしれません。
ところがどっこい。このゲームは読んで字のごとく、発展途上国の農民として生死ぎりぎりのラインでやりくりしつつ生き延びる、非常にシビアなサバイバルゲームなのです。
第三世界の過酷さが身をもって感じられるゲーム
いつ、干ばつや火災で育てた穀物がパーになるかわからない。
いつ、飼っていた家畜がゲリラ部隊に強奪されるかわからない。
いつ、内戦が勃発して経済がめちゃくちゃになるかわからない。
第三世界の農民となったあなたは、そんな不安定この上ない環境に身を置きながら、戦略的にリスク分散をおこないつつ、自身や家族を養っていきます。
やばい!内戦で穀物の値段が急に上がった!
やばい!急に疫病に感染したので、治療にお金を使わないといけない!
やばい!せっかく大金をはたいて買った牛がゲリラ部隊に強奪された!
毎ターンのように襲ってくるそんなアクシデントをかいくぐりつつ、どうすれば次のターンの収益を最大化できるのか?万が一の事態が起こっても大丈夫なように、育てる作物は分散させるべきか?労働力を確保するために子作りをするか?子どもは労働力として使うのか、それとも学校に通わせるべきなのか……?
そんな難しい選択を毎ターン迫られつつ、それを乗り越えて無事ゲームクリアした時の感想は、まさに「自分は生き延びれたんだ……」というあの呆然とした感情に他なりません。
第三世界では、生きるということ自体こんなに辛いことなのかということがヒシヒシと伝わってきます。
それが身をもってわかるという点で、このゲームは不思議で独特な感じを醸し出していることは間違いありません。
簡単な所感
3rd World Farmer はシリアスゲームの中でも特に有名な部類で、このゲームを通じてアフリカの支援に興味を持った方や、実際に現地にボランティアにいった方がいるなど、社会的なインパクトも小さくはありませんでした。
それだけ、このゲームはシリアスゲームとしての社会的意義を十分に持っているということが言えますね。
そして、ゲームとしての話をするならば、ぶっちゃけると割とランダム要素が強く、「運ゲー」的な感がぬぐえなくはないです。しかしながら、このゲームが表現したい「生の不安定さ」や「先が読めない恐怖」みたいなものは、むしろ「運ゲー」的な要素が強いからこそうまく表現できている……と考えることもできます。
また、そういった状況の中でプレイヤーに「どうやれば生き延びられるんだろうか」と実際にシミュレートさせることで啓蒙するという方法も、ゲームの「体験型メディア」としての特性をうまく生かしているなと感じました。
シリアスゲーム自体まだ概念が広まってから日が浅く、玉石混交な感は否めませんが、本作はそんな中で1つの目標・お手本として存在しているといえるでしょう。