YuRAN-HIKO

アナリスト兼、日曜歴史家のブログ。ゲーム分析や歴史のトピックが中心。

まずセグメントを切るべし!アプリゲームを分析する上での観点

普段自分はいわゆるF2P(Free to Play)型のモバイルゲームの分析を生業としています。
分析という業務の性質上、普段の業務ではひたすらサービスをより良くしていくために色々なことを考えていなければならないのですが、そういった自分の思考の過程や考え方自体をあまり言語化する機会はなかったので、この場で改めて言語化して整理してみようと思います。
なお、例によって自分の中でも混沌としたものを言語化してみようという試みのため、理解しづらい文章になっているかもしれませんが、そこはご容赦いただけますと幸いです。

 

まずはユーザーをセグメント化して考える

まずはKPIをゲーム全体で丸っと捉えるのではなく、ユーザーをセグメント化した上でKPIのモニタリングや分析を行うようにします。その理由は大きく分けて以下の2点であり、これらを踏まえないとなかなか全体の数字からでは有益な示唆を導き出すことが難しいと考えているからです。

  • ユーザーの行動やプレイスタイル、ゲームの進行度合いがバラバラで差が大きいこと
  • 全体のごくわずかな割合のユーザーの動向が事業としてのゲームの成功度を大きく左右する可能性があること

前者に関しては、よくある例として「コンテンツが不足していないか」「ユーザーのリソースは飽和していないか」「エンドコンテンツが機能しているか」といった問いを考えるにあたって必要になってきます。リリース直後から毎日ガッツリ長時間ゲームを遊んでいるユーザーと、マイペースでのんびり少しずつゲームを遊んでいるユーザーとでは当然ゲームプレイのプレイスタイルや進行度が大きく異なり、それゆえにゲーム内での目標やモチベーション、チャレンジや不満点は異なります。
それらをすべて一まとめにして指標化したとしても当たり障りのない数字しか出てこないことが多く、かつその数字の裏に潜んでいるユーザーの体験や感情に思いを馳せること*1は難しいと考えています。そうではなく、ゲームをガッツリ遊んでいるヘビーユーザーは今ゲームをどのように遊んでくれていて、リソースが飽和しておらず商品に対する需要も存在し、今後もゲームを継続して遊んでくれそうなのか。まだゲームの進行度が途上のユーザーにとって追加されるコンテンツのペースは早すぎないか、ゲームの仕様や導線が複雑になりすぎていないか、復帰ユーザーが久しぶりにゲームに戻ってきた際に、継続ユーザーに追いつくまでの物量が膨大になりすぎていないか、といったことをより深ぼって仮説立てていけるよう、セグメントを切って各セグメントごとにKPIをモニタリングし、分析していくことは重要です。  
 

どういうセグメントが考えられるか

では、ゲームのユーザーをセグメント化していく上でどのような軸が考えられるか。これは正直なところゲーム、運営フェーズ、分析したい内容によって様々です。唯一正解と言っていいようなセグメントというものは存在せず、分析者であれば常にどういうセグメント化が適切なのかを考え続けている必要があると考えていますし、それはいわゆるライト、ミドル、ヘビーユーザーといった区分に関しても当てはまります。
とは言うものの、いわゆる守破離の破や離の境地に達するにはまず型を理解する必要があるわけで、ゲームのセグメンテーションに関してもそういった基本的な型が無いわけではないと思っています。例えば、以下のような区分を型として持っておくことはセグメンテーションを考える上で有益と言えるでしょう。この中でも上から4番目以外は行動ログを用いた分析で対応することができますが、4番目だけは少し特殊で、ユーザーの心理的な側面からのアプローチになるため、デプスインタビューやそれに基づいたアンケートによる定量化といった方法でセグメントを定義していくことになります。

  • ゲームプレイの強度に基づくセグメント
  • ゲームの進行度に基づくセグメント
  • 行動パターンに基づくセグメント
  • ゲームプレイの動機に基づくセグメント
  • 課金状況に基づくセグメント

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セグメンテーションの軸

例えば、ゲームの進行度に基づくセグメントはユーザーをその名の通りゲームの進行度別に*2区切って分類を行います。その際特にいわゆる進行度の高い先端寄りのユーザーの動向は重要で、彼らにとって「遊ぶもの」が不足していないか、エンドコンテンツに人が流れて周回されているか、リソースの需要は飽和していないか......等といった観点は中長期的にゲームを安定して運営していく上で極めて重要になるため*3、そのセグメントのKPIは常時モニタリングできるような環境を整えておくことが肝要です。一方で、彼らはゲーム全体のユーザー数から言えばマイノリティな存在であるため、セグメントを切らずにゲーム全体を丸っと捉えるやり方では彼らの動向は数字的には微小な変動にしか見えないことがあります。ただ、この微小な変動こそがゲームの中長期的な運営の明暗を分けることもあり、それゆえにセグメントを切ってそれぞれのKPIを設定し、その動向をモニタリングすることの重要性が説かれるわけです。
 

パレートの法則よりさらに偏りが激しい

そして、これは最初に挙げたセグメント化を行う理由の2点目にも繋がってくる話になります。いわゆるパレートの法則(80:20の法則)というものがありますが、特にF2Pのモバイルゲームにおいてはその偏りはさらに顕著で、課金であれば全体の数%のユーザーが売上のほぼ大部分を占めていたり、全体の10%にも満たないようなヘビーユーザー層の動向がサービスの中長期的な安定感を左右することが往々にしてあります。
それゆえにゲームの運営においてはいわゆるヘビーユーザー*4の動向を正確に捉え、彼らの欲求に刺さるようなコンテンツを提供していくことの重要性は非常に高いと個人的には経験則として持っています。もちろん、ゲームを長く運営していく中でずっとヘビーユーザーのことばかりを考えていればよいわけではなく、常に新しく入ってくるユーザーにとっても遊びやすいものになっているよう、プレイ導線のコントロールであったり、ヘビー層と非ヘビー層の進行度の乖離を(ヘビー層の努力を無駄にしない形で)埋めていく施策は定期的に必要になってきます*5。ゲームという様々な層のユーザーが一同に会して遊ぶサービスにおいて、ユーザーをセグメント化してそれぞれのKPIを設定し、複雑な全体のエコシステムをいかにうまくとらえていくかが重要になるのです。
 

おわりに

では、そういったセグメントを切った上でKPIを設定し、ゲーム全体でのユーザー動向をどう可視化・分析していくのかというのはまた別トピックとして設定して考えていきたいと思います。特にゲームにおいてはユーザー行動の「流れ」や「サイクル」であったり、リソースの「需要」や「経済環境」といったものが重要になってくることが多く、中には基本的な可視化手法では捉えづらいものも存在します。実はそれをどう効率的に可視化して捉えるかということ自体がゲームアナリティクスのひとつの大きなトピックであると個人的には思っているのですが、それはまた別稿に譲って考えていくことにしましょう。

*1:言い換えるならば、数字が意味するところを解釈するということ

*2:例えばノーマルモードをクリア、ハードモードをクリア...であったり、ストーリーの〇章までクリア...であったり、はたまた所持しているキャラ等の戦力の強さや倒せる敵の強さ等

*3:先端に到達したユーザーにとって「遊ぶもの」が不足している状況はゲームがそれだけ短命になることを意味しており、かつ一般的に課金面でもヘビーである彼らの需要が飽和していることは売上観点のKPIの悪化に繋がるため

*4:ここでいうヘビーユーザーとは何ぞや?という定義問題はいったん置きにしつつ......

*5:いわゆるヘビーユーザーに追いつきやすいよう強化リソースを配布したりするなどはその一環です