ネットゲームデザイン理論 2. -ファーストステップ-

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ネットゲーム(といいつつも実際はスマホゲームが中心)のデザイン理論に関する覚書その2。前回と同様、今回もゲームのファーストステップに関する覚書を書き綴っていく。

前回記事のリンクは以下の通り。

yuranhiko.hatenablog.com

ファーストステップ突破状況の観測

ファーストステップの突破状況を把握するためには、ファーストステップを複数の「観測点」に区切ってそこにログを仕込み、そこに到達したユーザーの数を計測する。それをインストールユーザーである NUU で割れば各ポイントの「突破率」を出すことができる。意味あるポイントを「観測点」として設定することで、ユーザーがどういうポイントで離脱し、どういう改善を施していけばいいのかのアタリを付けることができる。

「観測点」はゲーム起動直後や会話イベントの区切り、ローディングが入る箇所、アセットダウンロードが入る箇所、ニックネームの選択、ファーストステップの終了などといったポイントに設定する。特にアセットダウンロードが入る箇所なんかではダウンロードの「開始時」と「終了時」に設けることでダウンロード中の離脱を把握することができる。

 

ファーストステップ突破の構造的把握

ファーストステップの突破状況を分析するために、基本的にはファーストステップの突破状況を「ファネル分析」と「コホート分析」の両方の側面から観測する。

ファネル分析は「ファネル = 漏斗」という意味のが示す通り、母集団のユーザー群が観測点として設定されたポイントA, B, C. . . を突破する率を集計することで、ユーザーがファーストステップのどのあたりで抜けやすいのかを把握し改善に生かすための分析。

コホート分析は上記のファネル分析で出したようなユーザーの動きを時系列で追う(ここではすなわち、ユーザーをインストール時期で分け、各時期で突破率の状況に変化がないかどうかを見る)分析手法である。アップデートや施策によってゲームの構造やプレイ状況に変化が生じたときに効果があったかどうかを見るのに用いる。

上記をグラフで簡単に見る際には、横軸にインストール時期、縦軸に突破率を取り、各観測点の突破率を折れ線グラフにして観測するのが良い。ゲームの内外で大きな構造変化が生じない場合、上記のグラフはきれいなミルフィーユ状のものになるはずである。分析観点としては、このミルフィーユに変化が生じた際、その原因が何かを特定し、次のうち手に繋げていくというアクションが重要。

 

ミルフィーユに変化が生じるとき

上記のミルフィーユに変化が生じる主な原因は以下の通り。

  • 通常時とは質の異なるユーザーの流入(質が良い/悪い)
  • アップデート等によるファーストステップの改善/改悪の結果
  • ダウンロードするアセット数の増加によるローディング時間の増加
  • 不具合によるゲーム進行不能

 大規模集客施策などで一定非ターゲットユーザーが数多く流入した場合、突破率が一時的に悪くなりやすいが、集客施策の効果がなくなった時点で突破率はもとの水準に戻るのでさほど気にする必要はない。アセットの増加や不具合による進行不能はそもそもネガティブな体験として改善すべきポイントであり、早急な対応が必要である。だが、これらは一定目に見えた結果であり、対策も明確であることから、分析作業としてはメインの課題とはならないだろう。

それよりも分析の際に重要なのは、アップデートによってゲームの構造に変化が生じ、それによって突破率が構造的に変化した場合である。ファーストステップに関しては意図的にシューティングを行わないと変化が生じることはほぼなく、打った施策に対して効果があったかどうかを把握するのは比較的容易。打った施策によって狙ったポイントの突破率が向上したかどうか。それによってそれ以降のポイントの突破率も押しなべて向上しているかどうかを分析すればよい。