ネットゲーム(といっても実際はスマホゲームが中心)のデザイン理論に関する覚書その4。今回はゲーム中のコンテンツが遊ばれているかどうかを見るKPIについて書き綴っていく。
コンテンツプレイ状況を観測するKPI
ストーリーやレイドコンテンツ、PvPやGvPといった各コンテンツはゲームプレイの土台を構成する重要な要素である。このコンテンツがちゃんと遊ばれているかどうかは、ユーザーの継続やマネタイズに直結する問題であり、可能な限り多くの人にコンテンツが遊ばれ、それが長期にわたって継続する状況が望ましい。
だが、コンテンツの消費やゲーム内経済状況の変化、ユーザーの飽きなどによってコンテンツのプレイ状況というのは基本的に低下 / 悪化 の方向性をたどる。その傾向が長期に継続するとユーザーの継続率にも影響する(=やることがない状態になって離脱する)ため、運営側は定期的なコンテンツ改修、報酬の拡充、ないしはキャンペーンによるコンテンツの活性化を図り、ユーザーの常に「やること」を提供し続ける必要がある。
そして、コンテンツのプレイ状況を把握する、ないしは各種アップデートや施策の効果を測定するために用いられているのが、以下のようなコンテンツのプレイ状況を観測するKPI群である。
- DAILYコンテンツプレイ率
- DAILYコンテンツ平均プレイ回数
- コンテンツプレイ継続率
各種KPI詳細
DAILYコンテンツプレイ率
ゲーム内の各種コンテンツをどれだけ多くのユーザーがプレイしているかをDAILYで観測するKPI。日次で各コンテンツのプレイUUをその日のDAUで割り、プレイ率を算出する。また、ゲーム内の何かしらのコンテンツをプレイしたUUをDAUで割り、何かしらのコンテンツをプレイした率を算出したり、PvE、PvP、ソロ、マルチといった感じでプレイの種別ごとに集計を行う場合もある。それをグラフにすると以下のような感じになるはずだ。
数値としては、1回でもそのコンテンツをプレイすればプレイUUとしてカウントされるため、どちらかというと「幅広く」コンテンツが遊ばれているかどうかを表す指標と言える。観点としては、施策やアップデートによって、より多くのユーザーにコンテンツが遊ばれているかであったり、コンテンツのプレイ率が維持されているか(=悪化傾向いないか)を日々見ていく形になる。
プレイ率が高いコンテンツほど、そのコンテンツは多くのユーザーにとって「プレイするべきもの」として認識されているということであり、ユーザーのプレイ喚起ができているかどうかが直に表れる指標である。
なかでも特に重要なのが「いずれかのコンテンツをプレイ」している率である。ここに計上されないユーザーは、ゲームにログインしたとしてもコンテンツを遊んでいないユーザーであり、そのユーザーにとっては現状あるコンテンツはほぼ「無きもの」に等しく、ユーザーに「やること」を提供できていないという点でこの数値の悪化は離脱の要因となるべきものである。この「何かしらのコンテンツのプレイ」率は概ねゲームの継続率とも相関があり、ここを高い水準で維持できるかどうかが、ユーザー規模の維持 / 増加という観点で運営の腕の見せ所となっていく。
DAILYコンテンツ平均プレイ回数
各種コンテンツが日々平均で何回プレイされているかを表す指標が「DAILYコンテンツ平均プレイ回数」である。プレイ率がどれだけ幅広く遊んでもらっているか、すなわちコンテンツの「横の広がり」を表す指標であるのに対し、こちらは個々のコンテンツをどれだけ熱心に遊んでもらっているか、すなわちコンテンツの「縦の深さ」を表す指標である。
観点としては、ユーザーの日々のどういったコンテンツをどれくらいプレイしているのかの把握であったり、何かしら施策を投下したときの熱量がどれくらいかを図るために日々の推移を追うことが多い。
特に周回型コンテンツやコツコツプレイするタイプのコンテンツのプレイ回数が落ちて
いないかどうかを把握し、周回型のイベントが期間を通じて熱量を保てているかどうかを見ることは重要である。
コンテンツプレイ継続率
ユーザーがとあるコンテンツを初めてプレイした日を1日目として、そこから n日目にそのコンテンツをプレイしている人がどれくらいいるかを表した指標。RR (Return Rate) をコンテンツのプレイという観点に応用した指標である。
用途としては、定常型の周回コンテンツであったり、期間開催でコツコツ周回するイベントクエストが継続してプレイされているかどうかを見るときに主に用いる。
DAILYイベントプレイ率ではあくまでプレイ率の水準が日々どう変化しているかを追うことはできるものの、それだけでは同じ人が継続してプレイをしているのか、日々違う人が入れ替わり立ち代わりプレイをしているのかを切り分けることは難しい。よって、より精緻に個々のプレイヤーがコンテンツを継続してくれているのかどうかを見るときにはこの継続率を見た方がより直接的である。
無論、周回性の低いコンテンツや開催時間が一日や数時間といった短いものに関してはこの指標は有効ではない。あくまで見るべき対象は周回性のあるものであったり、例えば1日1回はボーナスといった継続要素を含めたコンテンツ(ないしはその効果の測定)を行うときに見るべきである。