グローバルヒストリーとは何か?その考え方と高校教育への影響

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グローバルヒストリーとは何か?

グローバルヒストリーとは?

グローバルヒストリーとは「地球的規模での世界の諸地域や各人間集団の相互連関を通じて、新たな世界を構築しようとする試み」だ*1。1990年以降、グローバリゼーションが急速に進展する中、入門書も出されるなど、この歴史観が大いに勢いを増してきている。

グローバルヒストリー発展の背景

グローバルヒストリーが発展してきた背景として、大きく①グローバル化の進展②アジア圏の急激な経済成長が挙げられる。これについて『グローバル・ヒストリーの挑戦』を参考に紐解いてみよう。

グローバル化の進展

地球規模で発生し、全人類が協力して解決しなければならない問題がグローバルヒストリーという考え方が生まれた1要因だ。

ソ連邦の崩壊以後、各地で表面化したエスニック紛争に始まり、アメリカの一極的な覇権体制のもとで生じた9.11テロ事件やアフガニスタン、イラクへと続いていく国際紛争の連鎖。今世界で起こっている紛争はグローバルの規模で様々な要素が複雑に絡み合い、解決が非常に難しい問題となっている。

また、人やモノの移動の活発化はエイズや鳥インフルエンザ、新型コロナウィルスなどに象徴される疫病の急速な広がりを生んでいる。環境汚染や温暖化、天候不順、森林の減少といった環境問題も今や人類共通の課題だ。

さらに、インターネットの発展は文字通り世界の一体化をもたらし、情報の伝播がかつてない速さで進行している。金融危機に象徴される世界経済の一体化も、もはや1国では解決できないような問題だ。

アジア圏の急激な経済成長

また、従来の欧米を中心にした歴史観が根底から揺らいでいることも、グローバルでの歴史観を打ち立てる必要性に繋がっている。

その大きなトリガーとなったのが中国やインドを始めとしたアジア圏の急激な経済成長だ。これらの社会は、従来の歴史では「アジア的停滞」として捉えられ、その「失敗」の原因が「探究」され、さまざまな「固有の性格」が論じられてきた。

しかし、両国の経済成長はそういった歴史認識のあり方を根本から見直す動きに繋がっている。欧米に偏らない歴史観とはどういったものか。その中でアジアとその歴史を再評価することが求められており、よりバランスの取れた歴史観が要請される中でグローバルでの視点が注目を浴びるようになっている。

グローバルヒストリーの影響

グローバルヒストリーが与えた影響は広範に渡るが、ここでは一国史観からの脱却に触れようと思う。

かつての歴史はイギリス史、フランス史、日本史といったように国民国家の枠組みをベースとし、その起源や現在に至るまでの発展を明らかにするものが主流であった。これはある意味、共通の「祖先」や「民族」の系譜で人々の連帯感を醸成し、国民という単位でその領域下の人々を統合せんとする国家側の要請も働いていたと言える。

この国民国家史観が過激なナショナリズムや全世紀の大戦の遠因となったこともあり、現在の歴史研究では大いに批判にさらされていると言ってよい。とくに20世紀前半にうまれた「社会史」からの批判や、グローバル時代を生きる現在の歴史家によってこういった歴史観は厳しく批判されており、乗り越えられるべき対象とされている。

2022年以降、日本の高校における歴史教育が大きく変わるのをご存じだろうか。従来「日本史」と「世界史」に分かれていたものが「歴史総合」という形で一本化されるようになる。また、従来の暗記型の教育から、より歴史流れや関連を自ら解釈するアクティブラーニングの要素が取り入れられるようになる。

その中で日本の歴史も一国史として捉えるのではなく、世界の歴史の中での日本の位置づけやその歴史を学ぶ形に変わってきているという訳だ。

このように、近年歴史研究の最先端に位置するグローバルヒストリーが高校の歴史教育にも反映される。これから学校で歴史を学ぶ学生はそのうえの世代とは大きく異なる学習の過程を経て、異なった歴史観を養っていくと言えるだろう。

グローバルヒストリーに触れる

そんな上の世代の人々に向けて、高校教科書レベルの知識でグローバルヒストリーの通史を試みた一冊を紹介したい。

高校で世界史を勉強したことがある方なら、要所要所で出てくる人名や出来事に「そんなのもあったな」と懐かしさを覚えるかもしれない。しかし、それらを踏まえた歴史の解釈はいわゆる「高校の世界史」とは大きく異なる。ネットワークという観点から歴史を捉えなおした本書はこれまでとは違った見方やその面白さを提供してくれるとともに、グローバルヒストリーとはどういうものかの一端を分かりやすく伝えてくれるものになっている。