史料紹介 #1『魏志』倭人伝

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『魏志』倭人伝とは

『魏志』倭人伝とは中国正史の『魏志』巻30・東夷伝・倭人の条をさします。『魏志』とは晋の陳寿 (233-297年) の選んだ『三国志』のひとつ。中国正史の倭・日本伝のうち、制作年代の最も古い書であり、古代の日本列島に住んでいた人々の様相を今に伝える貴重な史料です。

邪馬台国の所在を巡る論争でもしばしば取り上げられるため、もはや説明が要らないくらい有名な書ではありますが、実際にこの『魏志』倭人伝を読んだことがある人は多くないかもしれません。

『魏志』倭人伝の面白さ

しかし、実際にこの『魏志』倭人伝を読んでみると、当時の中国大陸の人からどのように日本列島にあった倭の人々が映っていたのかが見えて面白いことが分かります。倭国の人々の衣食住にまつわる事柄や礼儀に関することなど、およそ2,000年前の人々の姿がありありと描かれているためです。

当時の人々が何を食べていたのか。酒は飲んでいたらしい。食事は手でつかんで食べていたらしい。体には入墨をしていたらしい。あくまで外の人が当時の倭人を見た様子を描いたものであり、倭人みずからの手による記述ではないですが、当時の人々の生活を興味深く読むことができるでしょう。

日本の歴史で有名な卑弥呼もこの『魏志』倭人伝に登場します。「その国、本または男子を以て王となし、住まること七、八十年。倭国乱れ、相攻伐すること歴年、乃ち供に一女子を立てて王となす。名付けて卑弥呼という。」から始める彼女の統治の様子や、狗奴国との不和、ならびに魏との外交の様子などが記されており、当時の政治状況を知る上でも非常に興味深いです。

その国、本または男子を以て王となし、住まること七、八十年。倭国乱れ、相攻伐すること歴年、乃ち供に一女子を立てて王となす。名付けて卑弥呼という。(『魏志』倭人伝)

また、卑弥呼死後の動乱や壱与が王位に就いた後の平定の様子も、非常に簡潔にではあるが記されています。教科書で有名な卑弥呼や壱与が史料上ではどのように描かれているのか、また文字史料上ではどこまでのことが伝わっているのか。教科書の記述の背景を生の史料から直接うかがうことは、歴史を知る楽しみの一つでもあります。

興味のある方には、ぜひ一読をお勧めする本です。