遊覧飛行ーワインとゲームー

都内某所で働くゲームクリエイターのブログ。ゲームやビジネスに関する話題、シリアスゲームの紹介、作成したゲームの公開、ワインに関する記事など徒然なるままに書き記していきます。

施策の効果測定について -いかに因果関係を見出すか-

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スマホゲームの分析を行っていると、プロデューサーやディレクター、はたまたプランナーから「この前行った○○キャンペーンの効果測定をお願いしたい」という依頼が来ることが多い (むしろ、分析を行っている人間からすれば、そのような依頼が来る前に自発的に効果測定を行って、その結果をチームにフィードバックする方が普通かもしれないが)。

ただこの施策の効果測定、ある程度分析の業務を行った人間であれば分かるのだが、思っているよりも簡単に明確な結果が出てくるものではない。

よくあるのが鶏卵問題で、例えばインストールした日にチュートリアルを突破したユーザーはそうでないユーザーと比較して継続率が高いだとか、課金したユーザーの方が継続率が高くなるとか...といった類のものである。前者に関しては、そもそもやる気のあるユーザーのほうが継続率が高くなるし、そうなればチュートリアルは簡単に突破するし、後者に関しても課金したことで継続率が高くなるのか、そもそも継続意向の強いユーザーの方が課金しやすいだけなのか...結局のところ、相関関係は見いだせてもそれが明確な因果関係であるとは言えないケースが多々ある。

また、例えばキャンペーン系の施策の効果に関しても、例えば年末年始にゲームをたくさん遊んでもらうために経験値2倍キャンペーンのようなものを打ったとしよう。そして、その結果、年末年始のユーザーのアクティビティ (ここではバトルの回数のようなものを想定) が増えたとしよう。

分析の経験が十分でない場合、キャンペーン前後とキャンペーン期間中のアクティビティを比較して、キャンペーンの効果によってアクティビティが増えたと結論づけてしまうかもしれない。だが、年末年始というのは一般的にユーザーの可処分時間が増え、その分ゲームを遊ぶ時間が増える時期でもある。

前述のアクティビティの増加は、本当にキャンペーンの効果によるものなのか、それともただ単に可処分時間が増えたからによるものなのか...本来効果測定とは、その要因の切り分けを行い、相関と因果の違いを見極めるものでなくてはならないし、そうでないと効果のない施策に誤ってポジティブな効果があると判断してしまい、それに基づいてそれ以降の施策判断が行われた結果、当人たちはPDCAを回しているつもりでも、実際にやっていることは効果のない施策を垂れ流しているだけ...という目も当てられない状況を招きかねない。

それゆえに、ゲームの分析を行う際には、施策とKPIの関係が相関に過ぎないのか、それともそこに因果関係があるのかを切り分けることが重要になってくる。

とはいうものの、因果関係をはっきりと明らかにすることはかなり難しい。なぜならば、そのためにはABテストなどの実験が必要になるからであり、これが例えばバナーのイラストや文言レベルのものであればまだしも、例えばABテストを行うために、一部のユーザーは経験値2倍...というような施策は到底打てないからである (公平性が損なわれる)。

なので、実際に現場で分析を行う際には、あまたの制約や混沌とした状況のなかで、可能な限り蓋然性の高いアウトプットを出す必要があるし、それに苦心されている分析者も数多く存在することと思う。

だが一方で、因果関係の特定に関しては、一定テクニックというか学術的な手法というものが存在する。統計的因果推論というのがそれで、実際に現場で悩まれている分析者、これから分析の業務に取り掛かる人、はたまた将来分析の仕事をやってみたい方々には、少なくとも基本的な考え方は一通り頭に入れておくことをお勧めする。

特に、初学者でもわかりやすい本として、私がお勧めしたいのは以下の2冊だ。双方とも、複雑さをなるべく抑えて基本的な概念の説明に重点を置いており、専門的な訓練を受けていない方でも読みやすい良書となっている。 

データ分析の力 因果関係に迫る思考法 (光文社新書)

データ分析の力 因果関係に迫る思考法 (光文社新書)

 

 そのうえで、もう少し踏み込んだ内容としては、以下の本もお勧めしたい。この辺りの本を一通り読んでおくと、因果推論の基本的な部分はマスターできるはずだ。 

岩波データサイエンス Vol.3

岩波データサイエンス Vol.3

 

 世の中で行われている施策には、意味があると思ってやっていることでも、実際にはほとんど意味がなかった...というものが少なくない。

分析にかかわる人間であっても、実際に施策を打ち出す側の人間であっても、データから因果関係を読み解く考え方については、教養として知っておいて損はないと思う。

DAUに関する覚書

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DAU維持のパラドックス

PCのオンラインゲームやスマートフォンのアプリゲームを運用している中で、おおよそすべてのタイトルに課題として降ってくるものが 減少し続けるDAUの維持 ないしは ゲームの継続率の向上 であろう。

基本的なことではあるが、ビジネスとしてゲームを捉え際に売上は ユーザー規模 x 客単価(ARPU) で表現されるため、一定の売上を上げ続ける、もしくは売上の向上を図る際にはこのどちらかの KPI を向上させる必要がある。

そして客単価は施策や商材の性能によってある程度コントロールしやすい(とはいうものの、短期的かつ無計画な客単価の向上試作はユーザーの課金疲れやリソースの充足、さらにはゲームの寿命短縮に繋がるため基本的には避けた方がよい)ため、ともすればそれがもたらす影響やリスクに関しては十分に議論されることなく実施され、そして一時的な売上を生み、短期的な一喜一憂をチームにもたらす。

それに対し、DAUの減少は往々にして課題としての深刻度が大きく、中長期的な視点では対策が必要で、焼け石に水的な施策が意味をなさない問題であるにもかかわらず(ないしはそれゆえに)、根本的な課題解決にはなかなか動くことができず、短期的なバラマキ施策によって一時的な難をしのぐ策が採用され、結果としてそれが長期的なリソースの充足に帰結し、結果として前よりもさらに事態が深刻になるといったケースもまれではない。

ゲームの継続率の向上は一朝一夕には成しえないし、焼け石に水的なその場しのぎの策を当てたところで一切改善するものではない。しかし多くのタイトルは前者ではなく後者を採用し、ないしはその場しのぎの施策で前者に対応するようなそぶりを見せ、結果的にズブズブとKPIがグラフの底に向かって沈没していくような趨勢をたどってしまう。それほど、DAUを維持するということ、ゲームの継続率をあげるということは難しい課題なのだ。

 

ノイズまみれのDAU

ゲームの運用において、おそらく利用ユーザーの規模を表すもっとも基本的かつよく使われている指標は DAU(daily active user)であろう。HAUやWAUやMAUや果てにはQAUみたいな指標もあるにはあるが、日々ゲームの運用で監視し、目標にしていく数字としてはDAUが一定妥当性があると私自身は思っている。また、DAUから得られる情報や気づきにはある程度限界がありつつも、それでもDAUを見てわかることも少なくない。

だがいかんせん、DAUにはノイズが多分に含まれている。それは曜日要因であったり、ゲーム内の施策によるものであったり、他のゲームがリリースされたことやプレミアムフライデーがあったなどといったゲーム外の要因であったり...とにかくDAUはそういった様々な要因に影響されて激しく増減する。なのでDAUを見るときには、そもそもそういった様々なノイズによって動くものだということを忘れてはいけない。

それゆえ、そんなノイズだらけの指標の増減に過剰に反応して意思決定を行うのも極めて危険である。もちろん、かすかな兆候から危険を察知して予め対策を取れる準備を行っておくといったものなら良いものの、一時的にDAUが上がっただけで過剰に喜んだり、逆に暫時的な減少に過剰に反応してバラマキ施策を打つなんてことは避けた方がよい。ましてや日々ゲーム内のKPIを追うという言葉をはき違えて、日次単位で目標値を割っていたからリソースをバラまいて帳尻を合わせようとするなど、無策の極みと言わざるを得ない。

タイトルの長期運営にとって本当に必要なのは一時的に明日のDAUを確保することではない。中長期的な視点で、ユーザーの継続やDAUの維持・積み上げが安定的・継続的にになされているかどうかだ。

 

華々しきイベントの成功、あるいは単なる焼け石に水

ゲームの運営をやっていると、大型のイベントを打ったことで期間中の盛り上げを作ることができ、それによってそのイベントの期間中はDAUの向上も含めてゲームの活性化に繋げることができた...という状況を目にすることがよくある。

この場合、ゲームの盛り上げは単に DAU を見るのではなく、もう少し別の指標(例えば以下のスライドにあるような指標など)を用いることが多く、高頻度でログインしてくれるユーザーの数をどう増やし・維持していくかが焦点になるケースも少なくないと思う。

www.slideshare.net

だが例えば仮に、例えばDAUの減少に悩まされ続けている架空のタイトルAが大々的なイベントコンテンツを開発し、それの初回リリースを行った結果ユーザーのウケも上々で、高頻度ログインユーザーの増加がみられた(=ゲームとしての盛り上がりを作れた、継続率の向上に繋げられた、さらにはそこからDAUの維持・上昇にプラスの影響がみられた)とする。

その場合、おそらく多くの人はそのイベントは成功で、ゲームの運営にも大きく貢献してくれたと思うだろう。もちろん、単発のイベント施策の評価としては、そのような考え方は全然間違っていないと私も思う。

ただ問題なのは、その後だ。そのイベントは期間中に上々の盛り上がりを作れたものの、イベント終了と同時にユーザーの継続率は一気に低下し、一時的に増加した高頻度ログインユーザーの数もすぐにもとの水準にまで戻ってしまったとする。もちろん、それと相関の強いDAUも、イベント終了とともにガクッと低下している。

その際、果たしてそのイベントの終了後まで含めたゲームの運用としては、果たして成功と言えるのだろうか。辛辣な言い方をするならば、多大な工数をかけて開発・運用を行っており、確かに期間中は一時的な盛り上がりが作れているものの、それが終わった途端にもとの状態に逆戻り。そうなった場合、中長期的な視点において、そのイベントは果たして意味があったと言えるのだろうか。

もちろん、イベント単発のKPIであったり、イベントそもそもの目的がDAUの維持・向上でない(たとえば、客単価を上げるなど)の場合、話は全然別物だ。だがもしそのイベントの目的がDAUの維持・向上であるならば、その開催期間中にしか効果を及ぼさないようなものは果たして成功と呼べるのか...安直に直近のKPIの動向だけを見て一喜一憂することの愚かさを改めて確認するべきであり、運用としては、そういった単発のイベントの成果を上げにいくだけでなく、イベントスケジュールの最適化であったり、ゲームの構造改善であったり、もう少し中長期的な視点から個々のイベントや施策の成否を判断する必要がある。そしてこの観点をもって運用をできているかどうかで、着実にDAUを積み上げていくような構造が作れるか、はたまた自転車操業的なせわしない運営スタイルになるかが決まってくるのだ。

エンドコンテンツとは?

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エンドコンテンツ――オンラインゲームやソーシャルゲームにおいて「最果てに位置するコンテンツ」としてよく使われる概念であり、一定のレベリングを達成したユーザーがその先を遊び続けるために存在するコンテンツがその名称で呼ばれることが多い。

エンドコンテンツは長期にわたる安定的なゲーム運営を志向するオンライン / ソーシャルゲームでは必須の存在であり、質が高く中毒性のあるエンドコンテンツをどれだけ提供し続けられるかはユーザーのプレイ継続や開発サイドのデスレース(終わりなき多忙なコンテンツ開発)回避を左右するといっても過言ではない。

だがエンドコンテンツという概念自体は一方では漠然と用いられることも多く、開発・運営サイドで用いられる際にも「エンドコンテンツとは何か」をすり合わせたうえで会話を進めないと議論が平行線をたどることも珍しくない。本稿ではそんなエンドコンテンツに関して、はじめに先人の発言をもとにその意味を整理し、エンドコンテンツが満たすべき要素について提示することを目的としている。

 

先人の発言

エンドコンテンツという概念の意味を整理するにあたって、まずは先人たちがどういう意味でこの単語を用いているのかを見てみることとする。ちなみにエンドコンテンツは英語で End Game Content と言い、英語での用法を見る際にはこの単語の使用例を見ていくこととする。

エンドコンテンツとは、RPGなどのゲームで最高レベルに達した後でも、何度も挑戦し楽しむことの出来るコンテンツのこと。[中略] エンドコンテンツとは、RPGなどのゲームで最高レベルに達した後でも、何度も挑戦し楽しむことが出来るコンテンツを指す。特に繰り返し遊ぶため高難度に設定されていたり、レア装備や素材などがドロップする傾向にある。

Game Lexicon ゲーム大辞典 (http://game-lexicon.jp/)

エンドコンテンツとは、最大レベルに達することでプレイ可能になるゲームコンテンツのことを指し、主にあらかじめ構築されたメインのストーリーラインを完遂した後のコンテンツであることが多い。要するに、エンドコンテンツとは繰り返し遊べるコンテンツを通じて最大レベルのプレイヤーに成長の感覚を提供する手段のことである。

Guild Wars 2 Official Wiki (https://wiki.guildwars2.com/wiki/Main_Page)

エンドコンテンツとは、ゲームにおいてキャラクターがレベルキャップに到達し、もはやレベリングに主眼がおかれなくなった段階のことを指す。この段階に到達する前のゲームプレイが経験値をためることや新しいスキルを覚えることを主目的としている一方で、エンドコンテンツはプレイヤーにとって洗練された「最終的な目標地点」を意味する。その目標地点においては、キャラクターは十分に成長しきっており、かつゲームの中で最も大きなチャレンジに挑める状態になっている。

Wowpedia (http://wow.gamepedia.com/Portal:Main)

 

導きだされる共通要素

上記の引用から導かれる、エンドコンテンツの要素とは以下の通りである。それらは完結に述べると「レベリング後の遊び」「反復可能性」「高難易度」という言葉に集約される。

  1. レベリング後の遊び:最高レベルに達した後の段階 / コンテンツである
  2. 反復可能性:繰り返し遊び続けられるものである
  3. 高難易度:高難易度、ないしはゲーム中で最高レベルの難しさを誇る

つまり、エンドコンテンツとはレベリングが完了してレベルという軸での成長がカンストしたユーザーを対象として、高難易度かつ反復可能な要素を含んだコンテンツのことを指すと言える。上記のうち、1と3はエンドコンテンツという言葉からして容易に想像できる意味だと思われるが、おそらく2番の反復可能性に関しては抜け漏れてしまっていることがある。1回クリアすれば終わりのコンテンツ、ないしは1回挑戦すればクリアできるようなコンテンツはエンドコンテンツとは言えないというわけだ。

また上記の定義からも、エンドコンテンツが必ずしも単なる「強い敵」を意味しているわけではないという点も重要である。もちろん「強い敵」そのものは上記3に含まれるため、他の要素を満たしていればそれは十分エンドコンテンツと呼べるものの、例えばそれが十分反復可能性と高難易度という性質を備えているならば、時間をかけて装備を強化するコンテンツというのも十分エンドコンテンツとみなせると言える。前者を仮に実力を試す「発揮の場としてのエンドコンテンツ」と呼ぶならば、後者は「育成のエンドコンテンツ」と言えるだろう。

 

エンドコンテンツとは?

繰り返しになるが、エンドコンテンツが満たすべき要素は「レベリング後の遊び」「反復可能性」「高難易度」の3点であり、例え高難易度であっても反復可能性に乏しいコンテンツはそこに含まれない。また「発揮の場としてのエンドコンテンツ」と並んで「育成のエンドコンテンツ」というものもエンドコンテンツの括りの中では成立しうる。これらはエンドコンテンツが生まれてきた課題である「ユーザーのプレイ継続」と「制作工数」の兼ね合いを考えればごく自然な結論ではあるものの、今一度自分たちがエンドコンテンツと呼んでいるものが、本当にエンドコンテンツとみなしても問題ないものであるかどうかは自問してみるのもいいかもしれない。

ネットゲームデザイン理論 4. -コンテンツプレイ状況-

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ネットゲーム(といっても実際はスマホゲームが中心)のデザイン理論に関する覚書その4。今回はゲーム中のコンテンツが遊ばれているかどうかを見るKPIについて書き綴っていく。

 

コンテンツプレイ状況を観測するKPI

トーリーやレイドコンテンツ、PvPやGvPといった各コンテンツはゲームプレイの土台を構成する重要な要素である。このコンテンツがちゃんと遊ばれているかどうかは、ユーザーの継続やマネタイズに直結する問題であり、可能な限り多くの人にコンテンツが遊ばれ、それが長期にわたって継続する状況が望ましい。

だが、コンテンツの消費やゲーム内経済状況の変化、ユーザーの飽きなどによってコンテンツのプレイ状況というのは基本的に低下 / 悪化 の方向性をたどる。その傾向が長期に継続するとユーザーの継続率にも影響する(=やることがない状態になって離脱する)ため、運営側は定期的なコンテンツ改修、報酬の拡充、ないしはキャンペーンによるコンテンツの活性化を図り、ユーザーの常に「やること」を提供し続ける必要がある。

そして、コンテンツのプレイ状況を把握する、ないしは各種アップデートや施策の効果を測定するために用いられているのが、以下のようなコンテンツのプレイ状況を観測するKPI群である。

  • DAILYコンテンツプレイ率
  • DAILYコンテンツ平均プレイ回数
  • コンテンツプレイ継続率

 

 各種KPI詳細

DAILYコンテンツプレイ率

ゲーム内の各種コンテンツをどれだけ多くのユーザーがプレイしているかをDAILYで観測するKPI。日次で各コンテンツのプレイUUをその日のDAUで割り、プレイ率を算出する。また、ゲーム内の何かしらのコンテンツをプレイしたUUをDAUで割り、何かしらのコンテンツをプレイした率を算出したり、PvE、PvP、ソロ、マルチといった感じでプレイの種別ごとに集計を行う場合もある。それをグラフにすると以下のような感じになるはずだ。

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数値としては、1回でもそのコンテンツをプレイすればプレイUUとしてカウントされるため、どちらかというと「幅広く」コンテンツが遊ばれているかどうかを表す指標と言える。観点としては、施策やアップデートによって、より多くのユーザーにコンテンツが遊ばれているかであったり、コンテンツのプレイ率が維持されているか(=悪化傾向いないか)を日々見ていく形になる。

プレイ率が高いコンテンツほど、そのコンテンツは多くのユーザーにとって「プレイするべきもの」として認識されているということであり、ユーザーのプレイ喚起ができているかどうかが直に表れる指標である。

なかでも特に重要なのが「いずれかのコンテンツをプレイ」している率である。ここに計上されないユーザーは、ゲームにログインしたとしてもコンテンツを遊んでいないユーザーであり、そのユーザーにとっては現状あるコンテンツはほぼ「無きもの」に等しく、ユーザーに「やること」を提供できていないという点でこの数値の悪化は離脱の要因となるべきものである。この「何かしらのコンテンツのプレイ」率は概ねゲームの継続率とも相関があり、ここを高い水準で維持できるかどうかが、ユーザー規模の維持 / 増加という観点で運営の腕の見せ所となっていく。

 

DAILYコンテンツ平均プレイ回数

各種コンテンツが日々平均で何回プレイされているかを表す指標が「DAILYコンテンツ平均プレイ回数」である。プレイ率がどれだけ幅広く遊んでもらっているか、すなわちコンテンツの「横の広がり」を表す指標であるのに対し、こちらは個々のコンテンツをどれだけ熱心に遊んでもらっているか、すなわちコンテンツの「縦の深さ」を表す指標である。

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観点としては、ユーザーの日々のどういったコンテンツをどれくらいプレイしているのかの把握であったり、何かしら施策を投下したときの熱量がどれくらいかを図るために日々の推移を追うことが多い。

特に周回型コンテンツやコツコツプレイするタイプのコンテンツのプレイ回数が落ちて

 

いないかどうかを把握し、周回型のイベントが期間を通じて熱量を保てているかどうかを見ることは重要である。

 

コンテンツプレイ継続率

ユーザーがとあるコンテンツを初めてプレイした日を1日目として、そこから n日目にそのコンテンツをプレイしている人がどれくらいいるかを表した指標。RR (Return Rate) をコンテンツのプレイという観点に応用した指標である。

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用途としては、定常型の周回コンテンツであったり、期間開催でコツコツ周回するイベントクエストが継続してプレイされているかどうかを見るときに主に用いる。

DAILYイベントプレイ率ではあくまでプレイ率の水準が日々どう変化しているかを追うことはできるものの、それだけでは同じ人が継続してプレイをしているのか、日々違う人が入れ替わり立ち代わりプレイをしているのかを切り分けることは難しい。よって、より精緻に個々のプレイヤーがコンテンツを継続してくれているのかどうかを見るときにはこの継続率を見た方がより直接的である。

無論、周回性の低いコンテンツや開催時間が一日や数時間といった短いものに関してはこの指標は有効ではない。あくまで見るべき対象は周回性のあるものであったり、例えば1日1回はボーナスといった継続要素を含めたコンテンツ(ないしはその効果の測定)を行うときに見るべきである。

ネットゲームデザイン理論 3. -ストーリー進捗-

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ネットゲーム(といいつつも実際はスマホゲームが中心)のデザイン理論に関する覚書その3。今回はファーストステップの次に来るフェーズ、ストーリー進捗について書き綴っていく。

 

ストーリー進捗とは

ここでストーリー進捗としているのは、ゲームのストーリーモード、シナリオモードといった消費型・進行型のコンテンツのことを指す。そこに明確な物語性があるかは問わない。ゲームの進捗感や「次にどういう展開が来るのか」といった期待感を持たせるために何かしらの物語性を設けているものが多いため、ここでは便宜上「ストーリー進捗」という呼び方をする。

ストーリー進捗を考えるうえで重要なポイントは、上で述べた「消費型・進行型」といった特徴だ。消費型というのは、1度ないしは数回そのコンテンツをクリアすればそのコンテンツを再び遊ぶ意味合いがないものを指す。進行型というのは、Aというステージ(マップ、ないしはレベル)をクリアすることでBというステージが開放され、それをクリアすることでCというステージが……という形で順々に遊ぶコンテンツが開放されている特徴のことを指す。

消費型・進行型のコンテンツはユーザーに細かく明確な目標とチャレンジを提供することができ、MMORPGでもスマホゲームでも、ゲーム序盤から中盤にかけてプレイ継続を促すためのコンテンツとして鉄板となっている。

 

ストーリー進捗が円滑に進んでいるかをチェックする

ストーリー進捗が円滑に進んでいるかどうかをチェックするためには、前回の記事でも記した「ファネル分析」が有効だ。消費型・進行型という特徴を踏まえ、各ステージの「挑戦」「クリア」を観測ポイントとしてその「関所」を突破した/離脱したユーザーがどれくらいいるのか、突破するための門が狭すぎないかどうか、あまりに簡単に/早く突破されてしまっていないかを観測する。

一番基礎的な観測方法は、各ステージの「挑戦UU数」と「クリアUU数」を一覧表形式で並べるやり方だ。前のステージのクリアUUから次のステージの挑戦UUに大きなギャップが生じていれば、前のステージのクリアが「到達して満足し切ってしまうポイント」になっているとも考えられる。逆に、ステージの挑戦UUとクリアUUの間にギャップが生まれている場合、おそらくそのステージは難易度が高すぎてクリアできないユーザーが多く生まれていると言えるだろう。

上記の挑戦UU数とクリアUU数という2つの数値に加えて、さらに状況を深堀りしていくなら「平均挑戦回数」という数字も観測していきたい。これによって、クリア率は高いものの挑戦回数が多いステージ、クリア率は低いけれども挑戦回数も少ないステージといった観点からステージごとの課題や改善点を把握することができる。その他、ゲームを始めてからそのステージをクリアするまでの平均経過日数なんかも、コンテンツ寿命を見るうえで有効な指標だ。

 

ストーリー進捗の問題点を解消する

ストーリー進捗でボトルネックとなっている箇所がある場合、解決法として「難易度調整」がまず浮かぶが、この方法はできる限り最終手段としたい。なぜならば難易度の下方修正はコンテンツの消費速度を早めるほか、既にクリアしてしまっているユーザーにとっては決して喜ばしいものではないからだ。

それよりも、PRやゲーム中のヘルプ機能を通じた「攻略法」をユーザーに伝えて自力での攻略を促したり、そこで詰まっている層向けにキャラやユーザーの成長を促すようなコンテンツを通じて攻略をしやすくする仕組みを作るといった方法で解決を図った方がスマートだ。重要な思想は難易度を上げ下げするということではなく、ボトルネックを生んでいるギャップを埋めるための「補助階段」を用意してあげることだ。

ネットゲームデザイン理論 2. -ファーストステップ-

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ネットゲーム(といいつつも実際はスマホゲームが中心)のデザイン理論に関する覚書その2。前回と同様、今回もゲームのファーストステップに関する覚書を書き綴っていく。

前回記事のリンクは以下の通り。

yuranhiko.hatenablog.com

 

ファーストステップ突破状況の観測

ファーストステップの突破状況を把握するためには、ファーストステップを複数の「観測点」に区切ってそこにログを仕込み、そこに到達したユーザーの数を計測する。それをインストールユーザーである NUU で割れば各ポイントの「突破率」を出すことができる。意味あるポイントを「観測点」として設定することで、ユーザーがどういうポイントで離脱し、どういう改善を施していけばいいのかのアタリを付けることができる。

「観測点」はゲーム起動直後や会話イベントの区切り、ローディングが入る箇所、アセットダウンロードが入る箇所、ニックネームの選択、ファーストステップの終了などといったポイントに設定する。特にアセットダウンロードが入る箇所なんかではダウンロードの「開始時」と「終了時」に設けることでダウンロード中の離脱を把握することができる。

 

ファーストステップ突破の構造的把握

ファーストステップの突破状況を分析するために、基本的にはファーストステップの突破状況を「ファネル分析」と「コホート分析」の両方の側面から観測する。

ファネル分析は「ファネル = 漏斗」という意味のが示す通り、母集団のユーザー群が観測点として設定されたポイントA, B, C. . . を突破する率を集計することで、ユーザーがファーストステップのどのあたりで抜けやすいのかを把握し改善に生かすための分析。

コホート分析は上記のファネル分析で出したようなユーザーの動きを時系列で追う(ここではすなわち、ユーザーをインストール時期で分け、各時期で突破率の状況に変化がないかどうかを見る)分析手法である。アップデートや施策によってゲームの構造やプレイ状況に変化が生じたときに効果があったかどうかを見るのに用いる。

上記をグラフで簡単に見る際には、横軸にインストール時期、縦軸に突破率を取り、各観測点の突破率を折れ線グラフにして観測するのが良い。ゲームの内外で大きな構造変化が生じない場合、上記のグラフはきれいなミルフィーユ状のものになるはずである。分析観点としては、このミルフィーユに変化が生じた際、その原因が何かを特定し、次のうち手に繋げていくというアクションが重要。

 

ミルフィーユに変化が生じるとき

上記のミルフィーユに変化が生じる主な原因は以下の通り。

  • 通常時とは質の異なるユーザーの流入(質が良い/悪い)
  • アップデート等によるファーストステップの改善/改悪の結果
  • ダウンロードするアセット数の増加によるローディング時間の増加
  • 不具合によるゲーム進行不能

 大規模集客施策などで一定非ターゲットユーザーが数多く流入した場合、突破率が一時的に悪くなりやすいが、集客施策の効果がなくなった時点で突破率はもとの水準に戻るのでさほど気にする必要はない。アセットの増加や不具合による進行不能はそもそもネガティブな体験として改善すべきポイントであり、早急な対応が必要である。だが、これらは一定目に見えた結果であり、対策も明確であることから、分析作業としてはメインの課題とはならないだろう。

それよりも分析の際に重要なのは、アップデートによってゲームの構造に変化が生じ、それによって突破率が構造的に変化した場合である。ファーストステップに関しては意図的にシューティングを行わないと変化が生じることはほぼなく、打った施策に対して効果があったかどうかを把握するのは比較的容易。打った施策によって狙ったポイントの突破率が向上したかどうか。それによってそれ以降のポイントの突破率も押しなべて向上しているかどうかを分析すればよい。

 

 

 

ネットゲームデザイン理論 1. -ファーストステップ-

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ネットゲーム(といいつつも実際はスマホゲームが中心)のデザイン理論に関する覚書その1。
今回はチュートリアル、その中でもゲームのファーストステップでの離脱を抑えるためのデザインについて書いていく。

 

ファーストステップとは

ファーストステップに関する明確な定義はない、というよりむしろゲームによって異なるというのが実情。基本的にはファーストステップ = チュートリアルと考えて問題ないが、そもそもどこまでをチュートリアルとみなすかはゲームによって異なる。

個人的には初回ゲームを起動し、オープニングムービーや会話イベント、バトルのチュートリアル、ニックネーム入力などを経て、最初にホーム画面に到着するくらいまでをファーストステップとして捉えている。

 

ファーストステップで重要なポイント

ファーストステップで特に重要になるのは「離脱の防止」。
ゲームをインストールしたユーザーがその面白さを経験する前に離脱するのは大きな機会損失であり、ファーストステップにおける離脱を極力抑えることがゲーム全体の継続率を高める上でまず考慮しなければならないポイント。

個人的な感覚値としては、リセマラやインセンティブ目的のユーザーを除外したNUUを母集団とした際、ファーストステップの突破率が85%程度あればそこそこ良くて、90%あれば十分高い水準かと思う。もちろん、この値はリセマラの定義や NUU/RUU の定義によって変化するため、あくまで参考値的なものでしかないが。

 

ファーストステップでの離脱を抑える手法

当たり前のことだが、ファーストステップでの離脱を抑えるにあたって「いかにゲームを初めてすぐにユーザーの気持ちをつかむか」が重要。魅力に欠けるムービー、退屈なイベント展開、陳腐なUIなどはすべてユーザーにネガティブな印象を与え、ゲームを継続しようというモチベーションを阻害させる。

逆に、迫力のあるムービー、ドラマチックでテンポのよい展開、いかしたUIなどはファーストステップでユーザーの気持ちをつかむのに非常に効果的。この点に関してはコンソール/オンライン問わずゲーム業界で蓄積されたノウハウのほかに、小説、映画、ドラマなどゲーム以外の分野で蓄積された知見が大いに役に立つ。非常にクリエイティブな領域。

他に比較的クリエイティブというよりはサービス志向的なものとして、いかに「ストレスフリーな体験」を提供できるかというのも離脱を抑える大きなポイント。タッチ操作の感度やロード時間の長さ、不要な思考ポイントの削除などのほかに、アセットダウンロードのストレスをいかに軽減するかが重要。

アカウント登録

ユーザーIDやパスワードの登録・認証といったいわゆるアカウント登録的な操作はゲーム開始前にユーザーにある程度の操作を要求するものであり、それが億劫でもともとプレイ意欲の高くないユーザーや、登録がうまくいかずゲームを開始できなかったユーザーが一定離脱するポイントである。

会社のポリシーや規約等で導入が必須の場合はやむを得ないが、可能であればファーストステップでアカウント登録操作を入れるのは避けたい。機種変更などでどうしても必要な場合は、チュートリアル終了後にミッションなどと絡めて登録を促したりした方が良い。

ニックネーム入力

わりとどのゲームにも存在しているが故に意識されにくいのが、ユーザーのニックネーム入力。基本的にテキストボックスを選択し、各ユーザーが各々の名前を入力して決定するスタイルが多い。

アカウント登録ほどではないものの、ここでも多少はユーザーに操作を強要する形になるため、プレイ意欲の低いユーザーを中心に離脱が起きやすい。特に、ユーザー間でのニックネームの重複を許可しないシステムの場合、なかなか名前を決定することができずより離脱に繋がりやすい。

離脱をなるべく減らすためには、ユーザー間のニックネーム重複を許容するシステムにしたうえで、さらにデフォルトで設定されている名称があると効果的。

アセットダウンロード

 ファーストステップの大きな離脱原因となっているのが、このアセットダウンロード。ダウンロード中は基本的に操作はできず「待ち」の時間となるため、その時間がかかればかかるほど離脱率は大きくなっていく。特にスマホゲームでは「ゲームを始めた時間や環境」「電場状況」「キャリアのデータ利用制限」といった様々な要因が絡み、ある程度大きな容量のダウンロードが入ることでゲームから完全離脱することも起きうる。

電場状況やキャリアのデータ利用制限などはゲーム運営側からはコントロールできない「外部要因」に属するため、これに関しては一定離脱が生じるものとして割り切るしかない。とはいえ、ダウンロード容量を減らしたり、ダウンロードを複数回に分割するなどして離脱を極力抑えることができ、そこに対しては注力するべきである。

ファーストステップでのダウンロードは最小限にする、オプションのダウンロードはゲーム内の設定から各自行えるようにする、アセットダウンロード中にミニゲームを挟む、アセットダウンロード中に初回ガチャを何度でも引き直しできる……といった要素が考えられる。

ステップの区切り

チュートリアルが終了してホーム画面に戻った際や、ストーリーの区切り(例:章の終わり)はユーザーの離脱ポイントとなりやすい。前者は特に「次に何をすればいいのかわからない」ライトユーザーの離脱を生みやすく、開発時には特に丁寧なコンテンツ誘導を行う必要がある。

後者に関しては一時的にゲームを閉じた後、アプリを再開するユーザーも多分に含まれるため完全離脱とは言えない。ただ、一時的な「休止」が完全離脱に繋がらないよう、ユーザーの目標感を醸成したりpush通知で反復ログインを促すなど、ゲームを再開するフックを用意しておく必要がある。