- はじめに 米国 ETF と SPLG の経費率
- S&P500 指数に連動する ETF (SPY, VOO, IVV, SPLG)
- 指標比較 (SPY, VOO, IVV, SPLG)
- SPLG の乖離率とチャート
- さいごに、買付手数料無料
はじめに 米国 ETF と SPLG の経費率
本日は米国株についてのお話になります。中でも米国 ETF に関するお話をさせてもらおうと思います。
ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズが、2023年8月1日から一部の ETF の経理比率を引き下げました。その引き下げ対象となった ETF のひとつに、SPLG (SDPR ポートフォリオ S&P500 ETF) があります。
SPLG (SDPR ポートフォリオ S&P500 ETF) とは、S&P500 指数に連動する米国 ETF です。SPY (SPDR S&P500 ETF) や VOO (バンガード S&P500 ETF) といったおなじみの ETF と同じ指数に連動するパフォーマンス目指します。
この SPLG ですが、経費率が従来の 0.03% から 0.02% に引き下げになったことで、S&P500 指数に連動する米国 ETF としては経費率が最低になったことで話題になっています。
ETF の経費率は低ければ低いほど資産形成においては有利になるので、他の S&P500 ETF から経費率の面において一歩前進したことは SPLG の魅力のひとつと言えそうです。
しかしながら、経費率は重要な指標のひとつではありますが、それだけでは ETF の良さは判断できません。この記事では S&P500 指数に連動する他の ETF と主要な指標を比較することで、SPLG の良し悪しを見ていこうと思います。
S&P500 指数に連動する ETF (SPY, VOO, IVV, SPLG)
S&P500 指数に連動する米国 ETF として、この記事では四つの ETF を取り上げようと思います。取り上げる対象は以下の通りです。以下、断りがない限りはティッカー名で記載します。
諸々の数値比較に用いる情報は Bloomberg が公開しているものを用いることにします。また、取引所価格など諸々の数値は2023年9月3日 (日曜日) 現在同サイトで確認できるものを用います。
指標比較 (SPY, VOO, IVV, SPLG)
では、早速 SPY, VOO, IVV, SPLG の四つの ETF の指標を比較していくことにしましょう。まずは各 ETF の指標を表に並べます。
ETF | 取引所価格(終値) | 出来高 | 資産総額 | 経費率 | 乖離率(プレミアム/ディスカウント) |
---|---|---|---|---|---|
SPY | 450.35 | 58,944,098 | 4148.66億ドル | 0.09% | 0.01% |
VOO | 413.83 | 3,587,971 | 3375.06億ドル | 0.03% | 0.01% |
IVV | 452.69 | 2,853,019 | 3535.23億ドル | 0.03% | 0.01% |
SPLG | 52.97 | 2,235,208 | 201.61億ドル | 0.02% | 0.05% |
取引所価格においては、SPY, VOO, IVV がいずれも 400~450ドルあたりに位置しているのに対し、SPLG は 50ドル程度とかなり抑えられています。価格面での買いやすさは SPLG に分がありそうです。
次に出来高ですが、これは SPY が圧倒的に他をしのいでいます。SPY の出来高の多さは大口投資家にとって有利に働きますが、小口の個人投資家であれば VOO, IVV, SPLG であっても十分な流動性を備えているため、よほど大口の投資家でない限り、ここはそれほど気にするところでもないように思えます。
資産総額については、SPY, VOO, IVV が SPLG を一桁上回っている状況です。いずれも3000億ドルを超えています。SPLGは200億ドルではありますが、それでも日本円にして2兆円を超えているため、ETF の資産規模としては十分と思われます。ここも個人投資家にとっては特にメリット、デメリットとなる点ではないでしょう。
経費率について。ここは SPLG が従来最低値だった 0.03% からさらに引き下げて 0.02% としたことにより、一歩リードする形となりました。個人投資家のレベルで 0.01% の経費率の差を気にする必要があるのかという批判もありますが、従来の最低値をさらに下回る数値を出してきたことは SPLG の訴求点として捉えてよいでしょう。
とにかく経費率の低さを重視する投資家の方にとっては、SPLG が選択肢のひとつとしてあがったと言えそうです。この結果に、VOO など他の ETF が今後どう対応していくのかも注目ですね。
最後に、ETF の乖離率について確認しましょう。乖離率とは、その ETF が連動を目指している指標からの数値のズレの度合いを示したものです。指数への連動を目指す ETF は、組入銘柄の売買コストやタイミング、運用管理費用など様々な要因によって指数から乖離してしまう傾向があります。この乖離率が小さければ小さいほど、連動する指標によく沿っているというものです。
乖離率を見ると、SPY, VOO, IVV はいずれも 0.01% と非常によく乖離を押さえられていると言えますが、それに比べると SPLG はやや乖離が大きいと言えます。乖離が大きいということはそれだけ指数から下振れしているということですので、ここは SPLG のデメリットのひとつと言えるでしょう。
SPLG の乖離率とチャート
この乖離率の差がチャート上どのように表れているかを、SPLG と VOO を比較してみてみましょう。以下のグラフは Google Finance からの引用です。
こちらを見ると、本当に微妙ではありますが SPLG のほうが VOO を下回っていると言えます。2023年6月末など、一部の期間ではその差がよりはっきり出ているようです。
チャートの比較はどうしても切り取る期間によって見え方が変わってしまうため、以下、参考のために1年分のチャートも添付します。引用元は同じく Google Finance です。
この程度の差であれば気にならないという方は、経費率が抑えられている SPLG も選択肢のひとつに入ってくるでしょう。どうしても乖離率を低く抑えたいという方は、引き続き VOO や IVV といった ETF が優先になるかもしれません。
さいごに、買付手数料無料
さいごに、日本の個人投資家にとっての VOO の強みとして、SBI証券や楽天証券などで展開されている米国 ETF の買付手数料制度が挙げられるでしょう。
2023年9月3日現在では両証券会社の米国株の売買手数料は約定代金の0.495% (金額によって変化あり) なので、買付時のみではありますが、これがまるまる無料になる VOO はお得度が高いと言えます。
SPLG のほうが経費率は現状押さえられていますが、この買付手数料無料の制度により、日本人投資家の目線で見れば、依然として VOO が強い点には変わりはなさそうです。
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