GUR 読書メモ Chapter 3: It is all about process

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Games User Research の読書メモ、今回は第3章の「すべてはプロセスの問題だ (It is all about process)」です。
筆者は Ubisoft Montreal User Research Lab で process manager を務める David Tisserand 氏。

内容メモ

GUR のプロセスの重要性を解いた章。
ゲーム開発という極めてスピードが早い環境において、テストを効果的に実施するための標準化や自動化を説いています。

ユーザーリサーチの観点でゲーム業界と他業界で大きく異なるのが時間の制約であり、これはゲーム開発のスピードの早さによるものだと筆者は説いています。
そのようなタイトなスケジュールの中で成果を出すにあたって重要なのがリサーチの "プロセス" であるということです。

1 情報収集

開発チームとのキックオフで要件を固めるために、詳細な質問集のテンプレートを用意するのが望ましいと筆者は述べています。
Ubisoft では、このリサーチ概要書(Research Brief)で以下のような質問項目を作っているのだそうです。

  • ターゲットユーザーはどんな人か?
  • テストの目的は何か?
  • 期日はいつまでか?
  • 以前に別の調査はやっているか?そのときの結果は何か?

2 ビルドの適合性を検証

ゲーム開発ではかなりのスピードで機能開発やメカニクスの調整が入るため、キックオフの段階ではまだテスト用のビルドに入る予定の機能が揃っていないことがままあります。
そのため、キックオフ段階はまだ入っていないメカニクスの仕様について開発チームにヒアリングし、それがどのように実装されてユーザーにどう使ってもらうことを期待しているのかを把握することが重要だと筆者は述べています。
また、ビルドや仕様書を確認して開発チームが知りたいことを調査できるのかチェックしたり、不可能な場合にはテストそのものを行わないことも視野に入れるべきとも述べられています。

3 マクロなテスト手法の設計 / プロセスのプランニング

テストの参加者、時間、リサーチャーの数であったり、開発チームがテストを通じて知りたいことに対して最も適切なテスト方法を設計する。 また、プロセスの設計においては会場や関係者の予定を早めに押さえておくなど、当たり前ではありますが重要なポイントについて触れられています。

  • 参加者の人数とそれに合わせてテストの流れを選定する
  • テストに十分な時間を設定する
  • リサーチャーの人数は1人で十分か、それとも1プレイヤーにつき1人必要か

4 参加者のリクルーティング

参加者のリクルーティングは早すぎても駄目だし、遅すぎても良くない。また、リクルーティングの対象者を選定するときの質問票はテンプレートを作成しておき、オペレーションを効率的に回せるようにするといったことが述べられています。

5 研究デザインの確定 / ラボの準備 / テストの実施

ここでもテストの時間を短縮するためのモデレーションガイドや質問票の用意、機材の事前準備について述べられています。
また、当日のテストを滞りなく行ってアウトプットの品質を担保するために、当日のテストの流れは事細かく詰めておく必要があるとも述べられています。

  • テストルームは空いているか?
  • アシスタントやモデレーターは当日用意できるか?
  • レポートのレビュワーは担保できているか?
  • プレゼンのタイミングでステイクホルダーの予定は確保できるか?

6 結果の分析 / レポート作成 / 知見のプレゼン

テストのデザインをここまでにちゃんとやっておけば、このプロセスはそのデザイン通りに仮説を検証して進めていけるはず。
ここでも、レポートやプレゼン資料のテンプレートであったり、資料作成のガイドラインを用意しておくことで作業がスムーズにいく他、ジュニアなメンバーの育成にも役立つと述べられています。

7 フォローアップ

会社によっては開発チームとリサーチチームの距離が遠い場合があるため、テスト実施後のフォローアップは課題の解決をする上で大切であると述べられています。

8 その他

アウトプットのフォルダ構成の標準化、個々の質問のデータベース化、マクロによる資料作成の自動化など、tips的ではあるものの作業の標準化と効率化を通じて、より本質的な価値を生み出すパートに時間をかけられるようにする取り組みが記載されていました。