分析のプロが解説!継続率を上げるFTUE改善:ファネル分析編

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FTUEとファネル分析

FTUE分析シリーズ第二弾。前回はFTUEとは何かについて解説を行った。今回からは実際にどうFTUEを分析し継続率の向上に繋げていくか、筆者の現場での経験も踏まえながら解説をしていこう。

FTUE分析の流れ

FTUE分析の流れを図解すると以下の通りだ。とあるタイトルの継続率に問題があるというストーリーを仮定して、この流れの「FTUEが問題なのかを確認する」「FTUEのどこに問題があるかを確認する」の2点について述べていきたいと思う。

FTUEが問題なのかを確認する

FTUEの分析にあたって一番重要なポイントは何か。逆説的だが、そもそもFTUEに問題があるのかどうかを確認することだと筆者は考えている。

お腹が痛いのに頭痛薬を飲んでも意味がないように、そもそも継続率が問題なのか。継続率が問題だとしたら、それはFTUEの問題によるものなのか。これをまずは見定めてから分析に入らないといけない。でないと、せっかくかけた時間と労力が無駄になってしまいかねないからだ。

どうやってFTUEに問題があるかを確認するか。端的に言うとD1-RR(最初にゲームを立ち上げた日から1日後の継続率)の値を見て判断するのが良い。特にこの値がアプリゲーム一般の水準よりも低い場合、FTUEに問題があることが多い。

D1- RRの値は新規ユーザーの定義によっても変化するため、その値が高いか低いかは各社の水準に照らし合わせて判断するのが好ましい。もしその肌感や比較実績がない場合は、App Ape などのデータを使って横串で比較するのが簡便な方法だ。ただし、その際は使用するデータソースを統一し、新規ユーザーの定義違いによる差が生じないよう気を付ける必要がある*1

ファネル分析でFTUEのどこに問題があるかを確認する

FTUEに問題がありそうだという検討が付いたとして、次に行うべきは具体的にFTUEのどこに問題があるかを特定することだ。

一番最初に行うべきは、ファネル分析だろう。ファネル分析とはアプリの起動からユーザーがたどるプロセスに段階的なチェックポイントを設定し、ゴールに到達するまでの歩留まりを分析する方法だ。

以下のグラフは仮のデータだが、このような形で各段階の到達率を分析するのがファネル分析だというイメージを持ってもらえるとよい。

例えば上のグラフだと、①オープニングムービーの視聴開始から終了まで、②アセットダウンロードの開始から終了まで、③チュートリアルの終了からステージ1-1の挑戦までが落差が大きいポイントだ。

こうやってユーザーの到達プロセスを可視化し、落差が想定以上に大きい箇所がないかを可視化する。そしてそのうえで原因を考察していくことがファネル分析の流れになる。

FTUEを見る上でのファネル分析の限界

ただし、ファネル分析も万能ではない。その限界を理解することがファネル分析を有効に活用する上で重要だ。

まず、ファネル分析はどこでどれくらいのユーザーが離脱しているかを示してくれるが、彼らがなぜ離脱したかについては何も教えてくれない。離脱理由については別のデータで補完するか、データを見る側の想像を働かせるしかない。

例えば上の例だと、アセットダウンロードで多くのユーザーが離脱している。これはおそらくアセットの容量が大きすぎる、軽量版(ボイスデータ抜きなど)のオプションがないなど、まだ理由を絞り込みやすい。

一方で、チュートリアル終了からステージ1-1挑戦までの落差については、原因を特定するのが容易ではない。UIが分かりにくいからなのか、ゲームの目標や進め方が理解されていないのか、それとも単純に面白いと思ってもらえなかったのかなど。そして仮に面白いと思ってもらえなかったことが原因だったとして、なぜ面白さが伝わらなかったのかといったことを考えて原因を絞り込む際、ファネル分析の限界が露になってくる。

上記は一般的なファネル分析の限界だ。筆者は数多くのアプリゲームを分析する中で、もう1つファネル分析の限界を感じている。それが、数値上はどこか特定の箇所が悪いようには見えないという問題だ。言い換えると、どこかのステップが一般水準で大きく落ちているのではなく、全体的に歩留まりが悪いといったようなことは普通に起こりうる。

特に昨今はゲームの品質も上がり、チュートリアルの設計についても各社研究の上ある程度のスタンダードのようなものが出来ている。アセットダウンロードなど一般的に落ちやすい箇所を除けば、どこかで大きく落ちているということはまず起きにくい。

全体的にぬるっと抜けているというな状態がファネル分析から分かったとすると、それ以上いくら数字をこねくり回しても無意味なことが多い。早急に次の原因究明プロセスに移行するべきだ。

FTUEの改善:ファネル分析の先へ

上記のように、ファネル分析を行っても分からないことは大量に出てくる。前回の記事で述べたFTUEの4つの要素を思い出してほしい。①事前期待との合致、②ゲームのテンポ、③画面数、④ゲームの内容理解の4つだ。基本的にファネル分析はこれらについて何も語ってはくれない。別の方法で原因を究明する必要がるという訳だ。

最も有効な方法が、実際に初見のユーザーのFTUEを観察して原因仮説を絞り込むことだ。次回はそのユーザーテストについて解説を行うとしよう。 yuranhiko.hatenablog.com

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*1:App Ape に関してはこちらの記事が参考になる。https://lab.appa.pe/2020-09/2020-09-02-retention-of-next-day.html