Games User Research の読書メモ。
これまでプロセスの話が主だったため、今回は少し趣向を変え、第7章の「GUR 手法概観 (An Overview of GUR Methods)」です。
筆者は Oculus Rift で Principal User Researcher を務める Michael C. Medlock 氏。
本記事中に掲載されている図表はすべて上記章の本文中からの引用です。
内容メモ
GUR で用いられる様々な手法について概観した章。
各手法の概要や長所 / 短所、さらにはどういうことを明らかにしたいときにどの手法が適切かなどについてまとめています。
まずは以下の観点で、GUR で用いられる主要な手法が分かりやすくマッピングされています。どういうフェーズにおいて、どういう観点で何をどれくらいの期間で知る必要があるのか、毎回このマッピング図を参考にしてテストに着手できるとよいかもしれません。(浅学ゆえになぜ 'uber' question と呼ばれているのかまでは把握できませんでした..)
- 行動を見る手法か / 態度を見る手法か
- ゲーム開発サイクルのどのフェーズで有効か
- 定量調査か定性調査か
- 'uber' question のどれに答える手法か
- 調査期間はどれくいらいか
上記の観点で各手法をマッピングしたのが下図になります。一言でテストといっても明らかにしたい事項や対象に応じてこれだけのバリエーションが出るのですね。
ちなみに 'uber' question とは以下の 4つの質問のことを指すそうです。
- そのプロダクトは誰のためのものか?
- そのプロダクトはどうあるべきか?
- 我々のビジネスモデルはどうあるべきか?
- そのプロダクトはどのようにして作られるべきか?
そのあと、本文では各手法の概要と長所 / 短所についてのまとめが記載されています。英語でそこそこ長い表になるのでここでは割愛しますが、各手法に対して簡潔に触れられているため、調査手法の見取り図を得るという意味では非常に有益と思います。もちろん各手法向き / 不向きがあるのでそれらをよく理解した上で使い分けることが重要なのは論じるまでもありません。
また、筆者は「どの問いに答えるためにどの手法を用いるのか」という点を強調しており、上述の 'uber' question をベースにしてさらに問いのパターンを詳細化しています。 テスト手法を選択する前に、まずはどういう問いを設定するのが先で、それをもとにそれにどう答えていくのか (どういう調査手法を取るのか) が決まってくるわけですね。
そのプロダクトは誰のためのものか?
- ユーザーは誰か?
- ユーザーはどうあるべきか?
そのプロダクトはどうあるべきか?
- どういう種類の体験が作られるべきか?
- ユーザーはなぜそのプロダクトを買うのか?
- 我々のユーザーは何をするのか?
- 我々のユーザーは可能であれば何を望むのか?
- 我々はどうやってこれまで思いつかなかったアイディアを創造するのか?
我々のビジネスモデルはどうあるべきか?
- どういうレートで我々は X を配るのか?
- X はどれぐらいコストがかかるべきか?
- 我々はいつ、どこで課金の障壁や機会を置くべきか?
- 誰がコンバートするのか?
- 誰が何を買うのか?
- 我々のビジネスモデルはうまくいっているか?
そのプロダクトはどのようにして作られるべきか?
- X は面白いか?
- X には何か問題があるか?
- ユーザーは X をどれくらい好きか?
- X は適度にチャレンジングか?
- X は十分良いか?
- X か Y どちらがよりよいか?
- X と Y、双方あるがどちらがより重要か?
- X はどれくらいの頻度で起こるか?
- 機能 X やモノ X はどれくらいで使い古されるか?
- ユーザーには私が作ったこのモノで X をしてほしいが、どうか?
- X はユーザーが期待したやり方で機能しているか?
- ゲームのナラティブは意味をなしているか?ユーザーは気に入っているか?
- これらすべての選択肢をどうやってひとまとめにするか?
- X は Y と同じグループに属しているか、それともより Z に近いか?
そして、上述の詳細化した各問位に対して、どの調査手法が適しているかをマッピングしたのが下図になります。
色がより濃いものほど、問いと手法がマッチしているものになります。こいった問いと手法の対応関係を把握しておくことで、明らかにしたい事項に対して適切な手法を用いて解を導き出すことができますね。特に上述の 'uber' question を詳細にしたものをベースに答えるべき問いがしっかり定まっているのであれば、それを明らかにする手法自体の選定はそれほど難しくはないはずです。
また、よりよいインサイトを得るために複数の調査結果を組み合わせたい場合など、同一の参加者に対して複数のテストを同時に実施したくなる場合があります。そういった場合でもどの手法とどの手法の組み合わせであれば可能なのかであったり、一部の調査に関しては同一の参加者に対して調査を行う場合でも、その順番に気を付ける必要があることを筆者は述べています。
本文では複数の調査に対して同一の参加者を使いまわせるかどうかがマッピングされており、それが下表になります。
ただし、組み合わせるパターンによっては先行するテストにおって後から実施するテストの結果にバイアスがかかってしまうものもあるため、注意が必要です。本文中では X と Y を比較する Comparison Study であったり、モノの愛称や関連性を調べる Affinity Study と他のテストで同一の参加者を用いたい場合、Comparison / Affinity Study を最初に持ってくる必要があると述べられています。(Comparison / Affinity Study は特に「順序効果 (order effects)」ないしは「キャリーオーバー効果 (carryover effects)」の影響を受けやすいため)
参加者を複数の調査で兼用することでアウトプットクオリティの向上や調査にかかる準備期間の短縮を図ることができますが、その際には本章で述べられている組み合わせになっているかで会ったり、順序効果によってバイアスがかかる設計になっていないかといったチェックをちゃんと踏まえてから実施する必要がありそうですね。