GUR 読書メモ Chapter 9: Surveys in Games User Research

スポンサーリンク

Games User Research の読書メモ。 今回も、GUR の手法を論じた章から今回もピックアップしました。第9章の「ゲーム・ユーザーリサーチにおける調査 (Surveys in Games User Research)」です。
筆者はバーゼル大学 (University of Basel) の Florian Brühlmann と Elisa Mekler 氏。

章全体としては GUR において調査 (survey) を何のために行うか、調査をどのように設計するか、調査票での質問の技法など、GUR に限らず調査を行うにあたって押さえておきたい基礎的な考え方やメソッドが丁寧に解説されており、特に初学者や調査にあまり馴染みのない分析者にとってもわかりやすい、入りやすいものとなっています。

ただし、そういった基礎的なお作法に関しては日本語でも調査に関する本を読めば十分に学ぶことができますので、本記事ではそれをなぞるようなことはせず、特に本文中でも初学者以外も含め参考になる知見、GUR に特に関連した調査票のテンプレートについて共有しようと思います。

GUR に関連してよく使われる調査票のテンプレート

GEQ (Game Experience Questionnaire)

IJsselsteijn 氏らが 2008 年に開発した調査票で、プレイヤー体験の7つの側面を包含しています。7つの側面とは、没入感、緊張感、有能感、フロー状態、ネガティブ影響、ポジティブ影響、チャレンジです。
満足したか、スキルフルに感じたかなどの70個近い質問に対して5段階で回答してもらい、それらの回答をもとに上記の7側面をスコアリングするといったものです。 以下に GEQ の調査票のテンプレート(英語ですが...)があるので、こちらが参考になるかと思います。

https://pure.tue.nl/ws/files/21666907/Game_Experience_Questionnaire_English.pdf

PENS (Player Experience of Need Satisfaction Scale)

Ryan 氏らが 2006 年に開発した調査票で「モチベーションの誘引」を調べるために行う調査で、GEQ と並んで広く使われている手法です。
具体的なモノをまだ見れていないのであくまでググったベースでの情報になりますが、各要素がユーザーのモチベーション誘引にどう影響しているのかを構造方程式モデリングのような形でまとめ上げるもののようです(間違っていたらすみません...)。
こちらも以下に解説資料がありました。

https://natronbaxter.com/wp-content/uploads/2010/05/PENS_Sept07.pdf

また、本文とは全く関係ないですが、ちょうどこの記事を書いている途中で GEQ と PENS を検証した論文を見つけたので、こちらも機会があれば読んでみようと思います。

https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S1071581918302337

IEQ (Immersive Experience Questionnaire)

Jannett 氏らによって 2008 年に開発された調査票で、プレイヤーに関連する要素 (認知面での関与、リアルな世界との解離、感情面での関与) と ゲームに関連する要素 (チャレンジや操作) を計測する手法です。ゲーム体験の中でも特に「没入感」に焦点を当てている調査手法と言えます。例えば「ゲームの世界に入ったような感覚がしたか」といったものを問うそうです。

PANAS (Positive and Negative Affect Schedule)

Watson 氏らによって 1988 年に開発された調査票で、様々な文脈において「強い」ポジティブ、ないしはネガティブな情緒的反応を計測するのに広く使われている調査手法です。どうやら日本語版も開発されているようです。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjpjspp/9/2/9_KJ00001287160/_article/-char/ja/

SAM (Self-Assessment Manikin)

Bradley 氏と Lang 氏によって 1994 年に開発された調査票で、非言語的な方法で喜び、怒り、情緒的反応の優位性を計測する手法です。
画面上に表示されるピクトグラムを用いて、そこから感じた上記の感情とその尺度を測るといったもので、GUR のほかに広告の調査などでも用いられているようです。

IMI (Intrinsic Motivation Inventory)

Ryan 氏によって 1982 年に開発された調査票で、もともとは内発的なモチベーションを測るために開発されたものですが、GUR において楽しさの尺度を広く計測するのに用いられています。こちらもどうやら日本語版が作られているようです。

https://psych.or.jp/meeting/proceedings/73/contents/poster/pdf/2AM114.pdf

PXI (Player Experience Inventory)

Hunickle 氏らによって 2004 年に開発された手法で、GEQ と似てはいますが、概念的には MDA フレームワークに結び付けた形で、広くプレイヤー体験を計測するのに用いられています。
操作のしやすさ、進捗感、視覚や聴覚へのアピール、目標の明確さ、チャレンジといったゲームの機能的な結果から、習熟感、好奇心、没入感、自由感、意味付けといった心理的な結果を測り、そこからゲームの相対的な楽しさを段階的にスコアリングして評価する手法です。機能的な特性から心理的な帰結が導出され、各心理的な要素を総合的に鑑みて楽しさというものを評価していると言えそうです。

https://uwspace.uwaterloo.ca/bitstream/handle/10012/12743/p335-abeele.pdf?sequence=3&isAllowed=y

さいごに

以上、GUR で用いられている主要な調査手法についてまとめてみました。自分もまだまだ不勉強なところがあるので、ここは海外やアカデミアの動向も踏まえて知識をキャッチアップしていきたいです。