YuRAN-HIKO

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海外のゲーム分析で注目されているPXI(Player Experience Inventory)

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PXI (Player Experience Inventory) とは、ゲームのユーザーテストで用いられる質問票の1つです。当ブログでも以前、GEQPENSといった他の質問票について紹介しましたが、PXIはその仲間と言えます。

本記事は、そんなPXIについての解説です。

PXIとは?

PXIとは、ゲームのユーザーテストの際に使用する質問票です。ユーザーテストを行った後、テスターがゲームを面白いと感じたか、ゲームのどの要素が優れているか、改善が必要なポイントは何かを調査するために使われます。ここ数年で開発された、比較的新しいものになります。

PXIは消費者心理の「手段目標理論」に基づいて作られています。手段目標理論というと難しく感じますが、要するに、ゲームの面白さは色んな機能や要素が集まって最終的に出来上がる。ユーザーは最終的な面白さを感じることはできるが、その面白さを構成する要素に分解し、説明することはできないというようなものです。ゲームデザインの理論では、MDAフレームワーク(Mechanics-Dynamics-Aesthetics)と近しい考え方になります。

少し分かりにくいので、下の図のような階層によってゲームの面白さが成り立っていると考えてください。ゲームの各機能によって、操作のしやすさやチャレンジという体験が得られ、その体験が集まって没入感や成長感といった感覚が得られる。その感覚の寄せ集めによって、ゲームが面白いかどうかが感じられるといったものです。

PXIの構造図
PXIの構造

PXIの調査票の構成

PXIは、操作のしやすさ、チャレンジ、進捗感、目的とルール、視聴覚といった機能的帰結と呼ばれるものが5項目。遊ぶ意義、没入感、成長感、好奇心、自由度といった社会心理的帰結が5項目からなります。それらに加えて、ゲームが面白いかどうかの1項目があり、合計11項目からなる調査票です。各項目は3つの質問からなっており、合計で33の質問から構成されています。

例えば、目的とルールという機能的帰結は、以下の3つの質問によってはかられます。

  • 私は、ゲームの目標を大まかに把握した。
  • ゲームの目標は、私にとって明確だった。
  • 私は、ゲームのさまざまな目的を理解した。

各質問は、-3から3までの7段階のリッカート尺度で回答する形になっています。分析の方法はいろいろあるそうですが、一番基本的なのは、上記3つの質問の平均点を「目的とルール」のスコアとして計測するやり方です。

PXIの特徴

PXIの特徴は、ゲームデザインとユーザーが感じる面白さの関連をベースに設計されていることが特徴です。言い換えると、何を改善すればいいかというアクションが取りやすい形になっていることがあげられます。

これは、機能的帰結と社会心理的帰結をあわせて質問していることによって達成されています。他の調査票であるGEQPENSはその関連を捉えづらいために、どこを直せばゲームがより面白くなるのかが分かりにくいのが欠点でした。PXIはそれを改善したものであると言えます。実業務での使いやすさという点において、PXIは優れていると言えるのです。

PXIの使い方

PXIの質問票やその使い方は、PXI Benchというサイトで公開されています。このサイトでは、質問票の妥当性の検証で調査したタイトル群のデータがベンチマークとして公開されています。そのベンチマークスコアを参照しながらPXIを利用できるようになっています。

まだ解決されていない問題点

PXIの開発者らは、その有用性を主張しながらも、いくつかまだ解決できていない課題があると述べています。例えば、検証に参加したオーディエンスが若い成人男性に偏っていることから、幼い子どもや年配の方、女性においても妥当性が担保されているのかという問題。さらには、ナラティブやマルチプレイといった要素を組み込めていないことなどです。

また、もとの調査票が英語であるため、これを日本で用いるためにはまず内容を正確に翻訳するところから必要になります。それに加えて、ベンチマークを利用する際には、国による調査の結果の出方を注意する必要があるでしょう。例えば、日本人は極端な値を付ける人が少ない傾向があるため、ヨーロッパや北米の人々を対象にしたベンチマークスコアと直接比較できるかは論点となり得ます。

そのような課題はありますが、PXIはよりアクションに落とし込みやすい調査票として注目されています。日本でも、その利用が広まってくれることを願っています。

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PXIについて