企画力とはなにか?1冊の名著とともに考える

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企画力とは組織力、情報力、先見力、創造力、構想力、表現力、説得力という7つの能力を総合して課題に対する解決策を提示する、提案する能力である。

はじめに 

最近、業務中に「企画力とは何か?」という問いに直面する機会がありました。

企画力にかかわらず、開発力だの女子力だの「○○力」という曖昧な言葉で理解してしまおうとする傾向がありますが、実際その言葉が何を意味しているのかと問われた際、果たして明確なイメージをもって答えることができるだろうか?

私が突き当たったのはそういう問題です。

「企画力」という安易な言葉で言い表されたもの。それがどういう要素で構成されており、その要素間がどう連携して総合力として現れるのか――その答えを探るキッカケになればと思い、一冊の本を手に取ってみました。

星野匡著『企画の立て方』。初版は1987年とだいぶ古いですが、その後何回も版を重ねてきたロングセラーの名著です。今回は、この本を手掛かりに自分なりに「企画力とは何か」を考えてみたいと思います。

 

そもそも、まず「企画」とは何か

「企画力」について考えていく前に、まずはそもそも「企画とは何か」を軽くおさらいしておく必要がありそうです。同書で述べられているところによれば、企画とは以下を指します。

ある課題に基づいて、その課題を達成するためになすべき仕事のイメージを描き、全体的なまた細部にわたる構想を練って取りまとめ、提案するとき、その提案内容および提案をまとめるに至る過程の作業

 つまり、よく勘違いされるであろう「アイディアを出す」ことであったり「新しいことを考えること」が企画の真髄ではなく(もちろん、それが企画作業の大事な一部であるとは言えます)、ある問題に対する解決策を提示することが企画の先にあるゴールであり、そのための提案内容・提案をまとめる作業が企画の本質だといえます。

個人的に重要だと思うのは、ここで「提案内容をまとめる」と「提案をまとめる」が並列に語られているということです。

「提案内容をまとめる」の方はわかりやすく、課題に対する解決策の内容をまとめる、つまりは「企画書」という形で具現化する作業だと言えるでしょう。それに比べて「提案をまとめる」方はやや抽象的で、より広義に「作業全体を取りまとめる」という意味なのかなといったんは理解しました。

いずれにしろ、上で引用した「企画」という作業全体を進行させる力が、漠然と「企画力」と呼ばれているものだと言えるでしょう。さて、この「企画とは何か」を踏まえたうえで、次からは「企画力とはなにか?」について考えていきましょう。

 

「企画力」の構成要素

さて、次に本題の「企画力」について考えていきます。

先に挙げた書では、企画力というものを「いくつかの力の総合されたもの」と述べ、それを以下の7つに分解しています。まずはそれを列挙します。

  • 組織力
  • 情報力
  • 先見力
  • 創造力
  • 構想力
  • 表現力
  • 説得力

 

組織力

「企画作成のために、組織的に動ける力」と同書では述べられています。この項目が第一に挙がっているところが重要であり、第二章が「まずは人から始まる」と題されているように、企画を成功させる大きな要因は「人」にあると言えます。

それは企画者自身の資質に限らず、プロジェクトを取り巻く組織であったり、企画者を取り巻くネットワーク(≒人脈)であったり、リーダーシップやチームワークであったり様々です。このあたりに「提案を取りまとめる」に込められたニュアンスが多少なりとも垣間見えるのかもしれません。

つまり、企画を進めていくうえで必要な第一の要素は、多少強引な言い方をするならば「アイディアを思いつく力」でも「資料を作る能力」でもなく、まずは人を取りまとめ、そこに集結する情報・知識・思いをうまく調整し、シナジーを生み出しながらプロジェクトを推進させていく能力であると言えるのかもしれませんね。

 

情報力

「いざ企画を作るときに、必要な情報が集められる力」。企画の精度を高めるにあたって、市場調査やユーザー動向、KPIなど必要な情報をいかに素早く、正確に集められるか。

マーケティングリサーチやデータマイニングを行う能力を磨いたり、常日頃からそういった情報を収集しておく必要があるということですね。

これに関しては「なるほどな」といったところ。ちなみに、リサーチの専門家をうまく使う能力も、この中に含まれています。

 

先見力

「先を見通し、今後の展望を予想する能力」。少なからず未来のある時点に対しての企画であるため、目まぐるしく変化する世の中の一歩先を見通す力が必要ということですね。

業務に追われているとどうしても目の前のことに意識が集中してしまい、狭い視野で物事をとらえがちになってしまいます。常にとは言わずとも、仕事の合間に一度視点をリセットし、世の中を大局的にとらえる習慣を欠かさないようにする必要がありそうです。

ここでも、筆者は外部の専門家をうまく使いながら先を読む能力を含めています。「情報力」のところでもそうでしたが、状況に応じていかにうまくひとを使うかの重要性が垣間見えますね。

 

創造力

「課題解決のさまざまな方法を考え、具体的な解決案を作り出していく能力」。アイディアを出し、それを選択・展開していく力が含まれます。

おそらく、企画と聞いて最初に連想するのがこの「アイディア出し」の部分かもしれませんが、重要なのはそれがあくまで企画作業の一工程、企画に求められる能力の一部ということです。

筆者はその作業を以下のような言葉で表現しています。少し長いですが、本質を突いた素晴らしい表現なので、全文を引用します。

現代のアイディア発想は、メモ用紙とペンを用意して、いい音楽でも聴きながら、やおらひらめきを待つといった牧歌的な作業ではなく、決められた日時までに道を通すためにブルドーザーを必要台数用意して、作業を進行していくというイメージにむしろ近いものです。

この作業において、企画担当者に求められるのは作業員兼現場監督としての立ち回りです。ここでもやはり、いかに周囲の関係者を巻き込んで工事を進めていくかが重要で、最初にあげた「組織力」が響いてくるのだろうなとは思います。

企画なのでアイディアを出して当然というのはもっともですが、いかに他人からアイディアを引き出し、最終的なアウトプットに繋げるかをそれに劣らず重要だということです。

 

構想力

「課題に対応するように解決策の全体像を構築し、その細部をバランスよく描き出せる力」。

資源の割り振りやスケジュールの策定も含まれ、筆者はこの「構想力」と先の「創造力」を「企画の両輪」と表現しています。

最終的に課題を解決することが企画の目的であるので、挙がった多種多様なアイディアを調整し、それを1つの「プラン」として取りまとめる能力。多くの作業関係者を取りまとめ、1つの「プロジェクト」を組織する能力。

この「構想力」は、冒頭で述べた「企画とは?」を支える屋台骨であり、その中軸となる幹のようなものかもしれません。

 

表現力

「関係者に提示するために、企画の全体像・部分像を描き出す力」。

分かりやすい例で言うと、企画書を作る能力なんかはここに該当します。

ですが筆者も述べる通り、表現媒体は必ずしも「企画書」というドキュメントであるとは限りません。時には図であったり、映像媒体であったり、プロトタイプであったりと様々です。

よい企画書を作る能力が重要であることに代わりはないですが、企画書はあくまで目的達成のための手段であり、それがゴールではないということを肝に命じておく必要がありますね。

 

説得力

「基本構造の段階から実施計画の段階まで、その企画に関して、関係者に説明をし、納得・承認を取りつける能力」。

分かりやすく言えば、プレゼンテーション能力や根回しの手腕などを指します。

これは企画の発注者に対してはもちろんのこと、プロジェクトメンバーの意識を統一する際や、外部の協力を取り付ける際にも必要な力ですね。

企画という作業の本質に「提案」というものが含まれている以上、企画とは切っても切り離せない能力です。やや誇張気味に言うならば、企画の作業全体を通じて「相手を説得する」という意識を常に持っておく必要があることを再認識させてくれます。

 

おわりに

少し長くなってしまったので、まずはここで一旦話を切ります。

このテーマは個人的に重要なものなので、また折を見て、個々のテーマについてより突っ込んで考えてみます。

冒頭で紹介した1冊はいい本なので、気になる方はぜひ一度読んでみてください。

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