日本のアプリRPG発展の歴史(2012~2021年)

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日本のアプリRPG発展の歴史

日本のアプリRPGの発展は、以下の3つの段階を踏んできたと言えるのではないだろうか。あくまで私見にはなるが、今回はその3つの段階を順に解説していきながら、日本のアプリRPGがどのように発展してきたのかを見ていくことにしよう。

日本のアプリRPG発展の歴史

アプリRPGの歴史①:マスの時代 (2012~2014年)

黎明期のアプリRPGの特徴はなにか。それは一言でいうとマスへの訴求だ。 すなわち、万人に受け入れられるゲームの志向と言える。シンプルで分かりやすく、尖りのない世界観ですきま時間でも遊べる。これらを基調とし、成長と達成のメカニクスを直球で遊ばせるゲームが多く登場した。

一方、当時はまだバトルは手動で遊ぶものだった。つまり、バトル中はちゃんと画面を見る必要があり、パズルの石を動かしたり、コマを引っ張って飛ばすにはプレイヤーが自分で操作しないといけなかった。そのため、短時間とはいえ、遊ぶときにはある程度のエンゲージメント(= 意識をゲームに向けること)が求められた。

そのため、ステージを周回して強化の素材を集めるにはかなりの時間と労力を費やす必要があった。そして「曜日ダンジョン」や「ゲリライベント」など、ゲームの運営に合わせてプレイヤー側がスケジュールを調整する必要があるコンテンツも多かったと言える。入りはカジュアルだがハマると相当ヘビーな関わり方が求められる。2021年現在から振り返ると、ある意味今とは真逆の体験だったとも言えるだろう。

なかには『クイズRPG 魔法使いと黒猫のウィズ』など、キャラクター性や冒険をするテイストの萌芽が見られるものもあった。ただし、当時はまだそういった情緒的な体験は「おまけ的なもの」だったと言える。そういったものを指して、当時「フレーバー」という言葉が使われることがあった。それはそのおまけ的な性質をよく表していると言える。

アプリRPGの歴史②:ミッドコア化の時代 (2014年~2016年)

マス向けの大ヒットタイトルが多く出回るようになると、後続タイトルはそれらとどう差別化して売っていくかを考える必要が出てきた。最初のうちはバトルの遊びをおはじきにしたり、クイズにしたりで差異化をはかっていた。しかし、それらの遊びも数に限りがある。各社はそれとは別の方向で差別化を模索する必要に迫られていった。

そのなかで、よりコアなゲーマーに向けたリッチな体験、すなわちキャラクター性と本格的な物語を強く押し出すタイトルが登場するようになった。そして、これが日本のアプリRPG市場において大きな転機となった。ミッドコア化時代の到来だ。

その象徴的なタイトルが2013年の『チェインクロニクル』と2015年の『Fate/Grand Order』だ。前者はそれまで「カード」だったものを「キャラクター」へと進化させた。後者は膨大な文字数と重厚なストーリーでそれまでのアプリゲームとは一線を画した。

『Final Fantasy Record Keeper』『星のドラゴンクエスト』『ドラゴンボールZ ドッカンバトル』『ONE PIECE トレジャークルーズ』など、コンソールゲームやマンガのIPを載せたタイトルが一気に増えていったのもこの時代だ。

重要視されたのは、まずもってIPの世界観や原作体験の再現だ。ストーリーやキャラクター表現を豊かにし、IPの持っている世界観を強く押し出すことが売りに繋がった。バトルは世界観との一貫性や原作体験を重視するために、オーソドックスなコマンドバトルが採用されることが多くなった。キャラクターの育成もより奥行きがあり、ヘビーなゲーマーでもやりごたえを得られる複雑な育成やデッキ編成のメカニクスが作られていった。

一方、オートバトルが発明され、ながらプレイのしやすさが増したのもこの時代の特徴だ。ただし、バトルの終了から次のバトルの開始までは操作が必要だった。スマホを片目でちらちら確認しながら、テレビやアニメを見るというながらプレイのあり方が形作られていった。

アプリRPGの歴史③:ながらコアの時代 (2017年~)

続く時代はながらコアの時代と言える。当然ながら、これは筆者の造語だ。端的に言えば、ながらプレイというライトな関わり方と、深い没入体験というコアな要素の融合を意図してこう名付けている。

ながらプレイの拡大

次第に市場に多くのアプリRPGがあふれるようになり、ガチャによるマネタイズを中心としたミッドコアゲームとしての「型」もある程度固まっていった。主要な大型IPも一通り出尽くすなか、後続タイトルはますます差別化が困難になっていった。クオリティに対するプレイヤーの期待値も上がっていった。後続各タイトルは技術と資本を結集し、既存タイトルの1枚上手を行くクオリティで勝負をする様相が色濃くなっていった。

この時期からながらプレイの範疇が大きく広がっていったことがあげられる。それはオートバトルからフルオートプレイへの進化だ。2017年にリリースされた『リネージュ2レボリューション』が、超ド級のグラフィックとMMORPGの大御所IPを使用しつつもまさかのフルオートで遊べるという体験は衝撃を生んだ。

このフルオートプレイの浸透によって、アプリRPG特有のながらプレイの形が生まれることになった。それはゲームが「従」で他のタスクが「主」であるようなながらプレイのあり方だ。例えば、ゲームをフルオートで放置しながら食事をする、仕事をする、テレビを見るといったことができるようになった。そればかりか、寝ている間にゲームを進行させるといったことすらも可能になった。

このながらプレイの拡大は、時を同じくして放置メカニクスという形でも発展していくこととなった。『放置少女』や『AFKアリーナ』といったものがその代表例だ。

また、バトルスキップ(スキップチケット)の導入も増えていった。こちらは少しベネフィットが異なり、主にすきま時間の活用に焦点を当てたシステムとして受け入れられていった。フルオートプレイとセットで搭載され、ユーザーが自分の生活リズムにあわせながらうまく「すきま時間」「ながら時間」を活用して遊ぶスタイルが浸透していくこととなった。

一見すると非常に重厚でリッチなゲームだが、実際遊んでみるとプレイの強度は非常に軽いという流れがこの辺りから顕著になっていった。

更なる没入体験の深化

もう1つの流れは、更なる没入体験の深化だ。それらはキャラクターとのインタラクションの強化、仮想世界表現の深化というかたちで現れている。

キャラクターに関しては、Live2Dによるキャラクターの動きの表現といった技術的なものだけではない。例えば、個別のキャラクターごとの物語が用意されている。キャラクターの強化がパラメータの上昇だけでなく、イラストの変化やストーリー開放に結び付く。キャラクターの成長がその心理や言動の変化に現れるなど。ゲームならではのインタラクティビティを活かしたキャラクターコンテンツの手法が磨かれていった。

仮想世界表現については、よりハードコアよりだが、3Dマップの採用や典型的なホーム画面の排除、オープンフィールドといったよりコンソールに寄せた体験を志向し、仮想世界そのものへの没入を特徴とするタイトルが徐々に現れてきている。

終わりに

この記事を書いているあいだ、新たに『白夜極光』というタイトルがリリースされた。盤面を使った戦略性の高いバトルを楽しめるのがウリのタイトルで、初速のセールスも好調だ。

2020年に出た『アークナイツ』もそうだが、バトルの戦略性を重視し、必ずしもながらプレイ一辺倒ではないプレイ体験を押しているタイトルがセールス上位に上がる傾向がみられる。これがマクロトレンドに対する差別化なのか、それともトレンドの変化を意味するのか。今後の流れにも是非注目していきたい。