YuRAN-HIKO

アナリスト兼、日曜歴史家のブログ。ゲーム分析や歴史のトピックが中心。

分析のプロが解説!継続率を上げるFTUE改善:基礎知識編

f:id:ngyope:20210518033754p:plain

アプリゲームの初期体験(FTUE)はユーザーのプレイ継続にとって重要だ。FTUEは「事前期待との合致」「ゲームのテンポ」「画面数」「ゲームの内容理解」の4要素で構成され、その質がゲームの継続率やエンゲージメントに大きな影響を与えている。

ゲームの初期体験(FTUE: First Time User Experience)はアプリゲームの継続率に大きな影響を与えるものとして欧米では重要視されている。アメリカのアプリゲーム分析ツールGamerefineryでは様々なタイトルのFTUEを動画で把握し分析する機能を提供しているほど、FTUEは重要視されている*1

しかし、FTUEは日本のアプリゲーム業界ではまだなじみの薄い概念ではないだろうか。

FTUEとは何か。何をどう分析して継続率の向上に活かすべきか。長年アプリゲームの分析に携わってきた筆者が解説をしようと思う。まずは基礎知識編として、本記事ではFTUEとは何かを理解するところから始めよう。

FTUEとは何か

FTUEとは初期体験(First Time User Experience)の略称だ。アプリゲームでは一番最初の起動からチュートリアルを経て、ゲームに関する一通りの説明が終わった後に「さあここからはあなたの自由に遊べますよ」となる段階までを指す。

ユーザー視点では、FTUEはそのゲームがどういった体験や面白さを提供してくれるかを品定めしている段階だ。そこでハマれればゲームを続けて遊ぶ気になるが、いまいちピンと来なかった場合は遊ぶ理由も見いだせず、ゲームを離脱してしまうことも珍しくない。

そのため、FTUEはその後のゲームプレイや継続率に大きな影響を与える。そのため、特に欧米のアプリゲーム制作ではリリース前に何度もFTUEのテストと改善が繰り返されている。リリースしてから直すのではなく、リリース前に万全の状態に持っていく必要があるという訳だ。

ゲームのリリース後、ないしはβテストを実施しKPIを確認した際、特に初日の継続率(D1-RR)が低い場合はFTUEに問題がある可能性が高い。その時は本記事の内容を参考にしてFTUE改善にチャレンジしてほしい。

FTUEを見る上で重要な4つのポイント

FTUEの改善を行うにあたって、FTUEがどういう要素で成り立っているのかを把握することは必要不可欠だ。FTUEを構成する要素は以下の4点と言える。

  • 事前期待との合致:ゲームを始める前の期待通り/以上の体験になっているか。
  • ゲームのテンポ:ゲームの進行速度や進捗は適切か。速すぎないか。冗長でないか。
  • 画面数:画面数や画面遷移数が多すぎないか。
  • ゲームの内容理解:ゲームのルールや遊び方、大目標が適切に理解されているか。

事前期待との合致

広告では謎解きゲームのように描かれていたのに、遊んでみたら全然違うパズルゲームだった。こんな出来事が2020年に問題となった。

ゲームを始める前のイメージと実際遊んだ時の体験が合っていることを筆者は事前期待との合致と呼んでいる。事前期待との合致はFTUEの質を決める上で重要な要素だ。

上のパズルゲームは極端な例だったが、例えば原作IPにあるアクション性の高いバトルを期待していたのに、ふたを開けてみたら必殺技をタップするだけのポチポチゲームだった。もしくは、原作IPのキャラクターを集めて育てるゲームだと思ったら集めるのは武器だった。原作IPはキャラクターの魅力が売りなのに、キャラのボイスや表情差分も少なくその魅力が表現されていなかった。これらはすべて事前期待とのズレが生じている例だ。

事前期待とゲーム体験を合致させるには、ターゲットユーザーがどういうゲームを求めているのかを理解することが出発点となる。彼らが求めているものを真摯に傾聴し、そのニーズを満たすものを提供しなくてはならない。そのニーズを把握した上で、プロモーションやストア画面などで正しくゲーム内容を伝えることが重要だ。

ゲームのテンポ

事前期待との合致と比べて、ゲームのテンポはずっと理解しやすい概念かと思う。

例えばバトルのスピードが遅すぎないか。会話パートが冗長じゃないか。倍速モードやスキップ機能は搭載されているか。画面を遷移する際のロード時間が長すぎないかなど。ゲームを遊んでいてじれったいと感じないか。

どういうゲームのテンポが好ましいかはターゲットユーザーのゲーム体験の豊富さにもよるため、ここでもそれをちゃんと理解することの重要性は強調したい。そのうえで、特に欧米ではゲームの一番面白い体験(例えば手に汗握るバトルなど)を可能な限り早くユーザーに触れてもらうことが重視されている。

『コインマスター』は良い例だ。ゲーム開始から5-10分以内でスロットの確変による興奮、スタミナ切れによる枯渇感、割引パックの購入による充足感のすべてが体験できるように設計されている。怒涛の勢いでアドレナリンが放出される体験を味わうことができるようになっており、FTUEのつかみに優れている。

画面数

上記のテンポとも関わりが深いが、画面とその遷移数もFTUEの質を決める上で重要なポイントだ。基本的に画面数が少なければ少ない方がよい。

例えば、あなたが関わっているタイトルはチュートリアルが終わるまでに何枚の画面が表示されるか。競合タイトルは何枚だろうか。

一般的に日本のRPGゲームはFTUEでの画面数が非常に多い。これは海外のゲームと比較してみると一目瞭然だ。ぜひ、一度競合タイトルの画面遷移がどうなっているかを分析してみてほしい。

ゲームの内容理解

言うまでもないが、チュートリアルはゲームの世界観を伝え、ルールや目標を説明し、ユーザーがスムーズにゲームプレイに入っていけるようにするための機能を担っている。

そのため、この機能が十分に果たせているかどうかはFTUEの質を決める上で重要なポイントだ。説明不足になってもいけないし、逆に説明過多でゲームのテンポを悪くするのもよくない。

遊んでくれるユーザーも、ゲームに詳しい人からライトな人まで様々。どこまで説明が必要かはタイトルが想定しているターゲットユーザーによって変わってくる。

近年のバトルロイヤルゲームは、チュートリアルの始めの段階でユーザーのリテラシーを確認し、既にそのゲームジャンルに詳しいユーザーにはチュートリアルをスキップできる機能を提供している。こういった配慮もFTUEの質を高める上で重要と言える。

f:id:ngyope:20210519042207p:plain
『荒野行動』はチュートリアルの内容をユーザーに選択できるようにしているほか、チュートリアル内でもスキップ機能を備えている。

次回の記事に向けて

記事が長くなってしまったので、いったん基礎知識編はここで区切りをつけることにしよう。次回は実践編。具体的にどういうプロセスを経てFTUEを改善していけばよいかについて解説を行うこととする。 yuranhiko.hatenablog.com