【認知心理学】データ分析者・ゲーム開発者・歴史研究者へのすすめ

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認知心理学のすすめ。

データ分析に関わる人。ゲームのデザインやマーケティングに関わる人。歴史を研究する人。このブログの読者すべてに認知心理学をオススメしたい。

認知心理学のすすめ

データの分析を行う人。そのデータをもとに意思決定を行う人。ゲームのデザインを行う人。ゲームのマーケティングを考える人。歴史を研究する人。歴史を学ぶ人......。このブログを呼んでいただいている皆さんに認知心理学の教養を深めることをおすすめしたい。

なぜ認知心理学がおすすめなのか

認知心理学とは人間がものごとを認識するしくみを研究する学問だ。「誤り」「感覚」「知覚」「記憶」「忘却」「概念」「問題解決」「意思決定」「無意識」といったトピックを扱う。

認知心理学はそれらのメカニズムの解明を試みる。そのメカニズムは広く人間全般に当てはまるため、認知心理学を知ることは人間という生き物を深く知ることに繋がる。人間はどのように物事を知覚し、記憶し、認知し、判断するのか。その癖や得意なところ、不得手なところは何なのか。そういったことをより深く理解し、日々の考えや行動に活かせるようになる訳だ。

人間の認知のメカニズムを知ることで、自分や他人の認知の限界を理解した上で行動することができるようになる。これは、データの分析に関わる人間やそれで意思決定する人にとって重要なことだ。認知心理学を踏まえることで、自分の分析アウトプットの質も、意思決定の質も上がると言える。

また、認知心理学を学ぶことで、他人の認知のメカニズムを踏まえてどのようなメッセージや働きかけをしていけばよいかが理解できるようになる。これは、商品開発や販売、マーケティングを行う人にとって大いに参考になる話だ。認知心理学はビジネスパーソン全般の教養として外せないものだと言えるだろう。

認知心理学を知っていると何が便利か

では、具体的に認知心理学を知っていると何が便利なのか。ここではいくつか具体的な例をあげて説明することにしよう。

データ分析者

認知心理学の概念に確証バイアスと呼ばれるものがある。これは、人間は何かを正しいと思うと、その仮説に合う事例ばかりを探し、そうでないものを探そうとしないという傾向のことだ。

例えば普段データを眺めていて、何か1つ仮説が浮かんだとしよう。ユーザー離脱の原因でも良いし、ヘビーユーザーの課金が落ちている原因でも何でも構わない。課題に対する原因仮説が浮かんだので、本当にこの仮説が正しいのか、その検証するために他のデータも見てみたいと思うことは少なくないはずだ。

その結果、やっぱり他のデータからも同じことが言えそうだということが分かったとする。その段階で、多くの人は自分の仮説は正しそうだと思うだろう。筆者も、そのように何か「謎を解明した」ことで嬉しくなった経験を何度もしてきた。当然、そのプロセス自体は間違っていない。注意しなければならないのは、その仮説の検証の仕方が妥当かということだ。

確証バイアスにより、人は自分の仮説に合う事例ばかりを探しがちになる。こういったやり方を正事例検証という。逆に、自分の仮説に合わない事例を探して、それが確かに規則に合わないと確認する方法を負事例検証という。分析の際には正事例検証だけでは確証バイアスに陥る危険性があるため、負事例検証や別の可能性(仮説)も考えて検証を行っていくことが重要だ。

歴史の研究者

人間がものごとをどう認知し、記憶し、忘れるか。そのメカニズムを把握することは、歴史の研究者にとっても重要だ。

歴史学はさまざまなデータ(史料)を扱う。その中には契約書のように何かを取り決めたことをその場でリアルタイムに記録に残すものもあれば、『日本書紀』や『史記』など後から出来事を振り返った歴史書のような類もある。さらに、文字の読み書きがさほど普及していない社会においては口頭による伝承や集団の記憶がデータとなるものもある。

歴史家はこのような過去の記録・記憶をもとに過去の世の中を再構築していく。そのため、史料の性質を深く理解し解釈することは、歴史観が大きく変わるような大発見に繋がることもある。

認知心理学の成果は、人間の認知がいかにその人の知識や経験に影響されているか、その記憶がいかに曖昧で「捏造」され、簡単に別の情報にすり替わってしまうかを知らしめてくれる。後知恵バイアスは有名な例だが、目撃者の記憶がいかに簡単にすり替わってしまうかを明らかにしたロフタスらの研究は注目に値する。史料を正しく理解する上で、人間の認知のメカニズムを知っておくことは非常に重要と言えるだろう。

ゲームの開発者・マーケター

ゲームの面白さを考えるとき、それを「面白そうだ」「面白い」「面白かった」に分けて考えることは重要だ*1。作るときは当然「面白い」ものを作らないといけないのだが、それを売るときには「面白そうなものにしないといけない。なぜならば、新しいゲームを買ってもらったりダウンロードしてもらう際には、それを遊んでいない段階で「面白そうだ」と思ってもらわないと見向きもされないからだ。

では、この「面白そう」とはいったい何者なのか。人はものごとをそのまま認知せず、自分の知識や記憶も使って認知していることが明らかになっている。例えば、はじめて見る種類の鳥であっても、我々はそれを「鳥」と認知できるのは、その人の中でこれまで蓄積されてきた鳥に関する知識や記憶に助けられる形で可能になっている。

上記の鳥の例をゲームに当てはめると、新しいゲームの情報を見た際、それが面白そうと感じられるかはその人のこれまでの様々な知識や経験の積み重ねによって生まれるものだと言える。「最近よくあるようなゲームで面白くなさそう」「昔ハマったあのゲームの雰囲気を彷彿とさせる」のような感覚も大いに知識や記憶によって生まれるものだ。

ゲームにはある程度の新規性が求められるが、あまりにその人の知識や経験から類推できないような新規性は「面白そう」とは映らない。逆に、あまりに慣れ親しんで使い古されたものも面白そうとは思ってもらえない。自分たちのゲームを遊んでくれるであろうターゲットがどういう人生をこれまで歩んできたのか、特にどうようエンタメ体験を経てきたのかを理解することが重要だ。認知心理学を学ぶことで、それをより深く理解できるようになるだろう。

認知心理学の基礎が学べる本

上記の通り、認知心理学はあらゆる人におすすめしたい教養だ。筆者も認知心理学の専門家ではなく、あくまで学習者だが、その知見は大いに日々の業務で参考になっている。

はじめて認知心理学を学ぶ人に、例えば以下の本をおすすめめしたい。非常に分かりやすくトピックがまとまっていて全体がつかみやすい構成になっている。また、参考図書も豊富で、さらに特定のトピックについて学びたい際にも有用だ。