遊覧飛行ーゲーム分析・データサイエンス・歴史・ワインー

ゲーム業界のデータアナリスト兼インディー歴史家のブログ。ゲームに関する分析の話題や歴史のトピック、さらには趣味のワインについてまで書いているブログです。

DAU/MAU比率はゲームの分析ではメジャーでない:その理由

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DAU/MAU比率はサービスに対するユーザーの定着性を見る上で効果的な指標だが、時間経過でユーザーの資産が積み上がり遊ぶモチベーションや目的が変化するゲーム(スマホゲーム)においては継続率(RR)を用いて定着性を見た方が効果的なケースも多い。

DAU/MAU比率とは?

かつてFacebookが提唱して以来有名になったKPIに、DAU/MAU比率というものがある。その名の通り、ある日のアクティブユーザー数 (DAU) をその日からさかのぼって1か月間のアクティブユーザー数(MAU)で割った比率を指標化したものだ。

この指標はそのサービスを使う人のうち、日常的に使用する人がどれくらいの割合を占めるかを表したものなため、この数字が高いほどエンゲージメントが高く定着性の高いユーザーが多数を占めているということができる。逆にこの値が低い場合は、より散発的に(時折)使用するようなユーザーが多いことを示している。

そのため、この指標はサービスの定着性を示すものとして重要な数字であると考えられてきた。

スマホゲームにおけるプレイ継続の重要性

ハイパーカジュアルゲームなど一部のジャンルを除けば、スマホゲームにおいてプレイの継続率は最も重要なKPIのうちの1つだ。スマホゲームはパッケージを販売して終わりというビジネスモデルではないため、いかに一度ゲームを始めてくれたユーザーに長く続けてもらい、その中でお金を払ってもらうかが重要であるからだ。

そのため、一見するとスマホゲームにおいても上で述べたDAU/MAU比率は重要なKPIであるように思われる。ただし、ネットで「DAU/MAU比率 スマホゲーム」のように検索しても驚くほどヒットする記事が少ない。これはなぜなのだろうか。

継続性を示すRRという指標

単純にスマホゲーム業界においてDAU/MAU比率というKPIが浸透していないだけの可能性もあるが、結論としてはスマホゲームにおいてDAU/MAU比率はそこまで重要な指標ではないからというのが筆者の考えだ。

スマホゲーム業界では継続性を示す指標としてRR(アールアール、Return RateないしはRetention Rate)という指標が存在する。Web解析などの業界ではコホート分析という言葉を使うと馴染みがあるかもしれない。要はある日のNUUを100%とした時に、そのユーザー群がn日後に何%ゲームにログインしたか(=継続しているか)を示した指標だ。詳しくは当ブログの過去記事を参照されたい。

yuranhiko.hatenablog.com

これまで様々なアプリゲームタイトルの分析に関わってきた筆者としては、このRRの方がスマホゲームというサービスにおいてはユーザーの継続性や定着性を測るうえで有用な指標だと考えている。

なぜスマホゲームではRRの方が良いか

端的に言うと、スマホに限らずたいていのオンラインゲームはゲームを遊んでいくうちにユーザーの資産が蓄積されるような仕組みになっている。この資産は何かというと、例えば手に入れたキャラクターや装備品、そのレベルなどのパラメータ、クリアしたステージ、達成したミッションなどだ。広義には対戦ゲームにおけるプレイヤーのランクみたいなものも含めてもよい(対戦ゲームのランクのように上下するものは厳密には「蓄積される資産」とはやや意味合いが異なるが)。

そしてこれらの資産が蓄積されていくことで、日々刻々とユーザーの遊べるコンテンツやゲームをプレイするモチベーションや目的が変わっていく。ゲームを始めたばかりは資産も少なくステージもクリアしていないので、まずは手持ちのキャラクターのレベルを上げつつメインストーリーをクリアしていく。やがてレベルが上限近くに達してくると次は装備品をカスタマイズして更なる強化をはかり、高難易度のボスに挑戦していく。キャラクターも装備品もある程度育て切った後は、例えば対戦型のコンテンツで勝つために手持ちの資産をどう組み合わせていくか、そのために様々なバリエーションのキャラクターや装備品を揃えていく、といったようなものだ。

その体験の流れがうまく機能しているか、ボトルネックになっている個所はないか。進捗のテンポ感は適切か。手持ちの資産と挑戦できるコンテンツの難易度のバランスは適切か。こういったことを確認、検証し、全体のバランスを調整していくことがスマホゲームの運営では求められる。そのため、スマホゲームにおいては継続性を資産やそれによって変化するユーザーのモチベーションや目的と切り離して考えることはできないのだ。

そして、これがRRが重要視される理由である。RRはD1(インストールから1日後の継続率)、D3(インストールから3日後の継続率)、D7(インストールから7日後の継続率)、D14(インストールから14日後の継続率)、D30(インストールから30日後の継続率)といったようにインストール開始からの経過日数で切って計測する指標であると上で述べた。そして、この経過日数ごとに予めどういう体験をユーザーに提供するかというゲームの設計が存在する。その設計と実態にズレはないか。設計が破綻しているところがないか。それを確認していく上でRRという指標はゲームの分析にマッチしていると言えるのだ。

おわりに

DAU/MAU比率という指標はサービスに対するユーザーの定着性を見る上で効果的だが、時間経過でユーザーの資産が積み上がり遊ぶモチベーションや目的が変化するゲーム(スマホゲーム)においては継続率(RR)を用いて定着性を見た方が効果的なケースも多い。これがおそらく、ゲームの継続性分析においてDAU/MAU比率よりもRRが受容視される理由なのではないだろうか。