遊覧飛行ーデータアナリストのブログー

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スマホゲームの基本KPI -1. DAU, PUU, ARPU, ARPPU, 課金率-

はじめに 

このシリーズでは、スマホゲームのKPI (Key Performance Indicator: 重要業績評価指標) の基本を解説していきます。

主な読者層としては、将来スマホゲームの業界で働きたいと思っている学生や、入社したてでこれから現場に入っていく新入社員の方、もしくはゲーム以外の業界で働くビジネスパーソンなどを想定しています。

本シリーズを通じて、スマホゲームのKPIのイロハについて持ち帰っていただけると嬉しいです。なお、本シリーズではダウンロード無料、アイテム課金制のゲームを対象にして話を進めていきます。

 

スマホゲームのKGI -売上-

KPIの話に入る前に、似たようで別の指標である KGI (Key Goal Indicator: 重要目標達成指標) について軽く触れたいと思います。

KGI とはその名の通り「目標 = Goal」の達成を図る指標で、一番基本的なものとしては「売上」や「利益」があげられます。非営利として開発・運営するならまだしも、ビジネスとしてゲームを制作・運営するにあたっては「売上」や「利益」は絶対に無視できない指標なため、売上や利益がプロダクトの最終的な目標として設定されることが大半になります。

ただし、KGIは目標として追うべき指標であることは間違いないものの、行き過ぎてしまうと場合によっては指標をハックする(≒目標達成のためであれば手段を問わない)という思考にも陥る危険性があります。そのため、プロダクトとしてあるべき姿の実現度を測り、より直接的に追い求める指標をKGIとは別に設定しつつ、その指標を追い求めることで自然とKGIの目標も達成されていく、という形を作るのがプロダクト開発・サービス運営としては「きれいな」形であると言えるでしょう。

ですが、そういった理想的なKPIというのは必ずしも簡単に決められるわけではなく、その策定はビジネス・プロダクト・ユーザーといった様々な知見を踏まえ、それらの観点を総合する必要がある非常にクリエイティブな営みであると言えます。本シリーズではそこまで深い話には踏み込まずに、まずはより基本的な指標の解説から入っていければと思います。

 

基本 KPI 1. -DAU, ARPU-

KGI・KPIを設定していく一番基本的なアプローチが、上流の指標をMECEに細分化しより下流の指標を作っていくことです。

ここでは、いったんKGIを売上と設定するとしましょう。売上を分解する方法はいくつかありますが、最も基本的なものは売上を 顧客数 x 顧客単価 に分解する方法です。スマホゲームでは日次の KPI を追うことが多いため、顧客数は 1日の利用者数、顧客単価は 1日の利用者数の1人あたり売上 に分解することができます。前者を業界用語で DAU (ディーエーユー、ダウ: Daily Active Users)、後者を ARPU (エーアールピーユー、アープ: Average Revenue Per User) と呼びます。ARPUは、より明示的に日次の顧客単価を指す場合は ARPDAU と呼んだりもします。 

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日次売上 = DAU x ARPDAU

一番シンプルで基本的なフレームワークではありますが、他のビジネスと同じように、スマホゲームの運営にあたってもこの 2 つの KPI を最大化していくことが売上目標を達成していく上で一番ベーシックなスタンスになります。ただし、これらの指標もまだまだ直接目標とするには漠然としており、これらをさらに分解して指標化していくことが主流となります。

 

基本 KPI 2. -PUU, ARPPU- 

売上を分解するもう 1つの方法として、売上を課金者数 x 課金者1人あたりの顧客単価に分解するやり方があります。日次ではそれぞれ PUU (ピーユーユー: Paid Unique User)、ARPPU (エーアールピーピーユー: Average Revenue Per Paid User) と呼びます。

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売上 = 課金者数 x 課金者の平均課金額

つまり、お金を払ってくれたユーザーの数と、その方々の平均課金額をかけた合わせることで、売上を出すという計算です。基本プレイ無料のゲームでは必ずしもすべての遊んでくださるユーザーにお金を払っていただくビジネスモデルにはなっていないため、売上を顧客数 x 顧客単価に分解するさいも上記のように2パターンの考え方ができるということになります。

 

基本 KPI 3. -課金率-

これまで、DAU, ARPU, PUU, ARPPU と 4つの KPI を見てきました。最後に、これらと関係の深い「課金率」という KPI について見ていきたいと思います。

課金率とは、日次で考えるならば、1日の利用者数のうち何人の方に課金してもらえたかを表す指標です。シンプルではありますが、その計算式は以下の通りになります。

課金率 = PUU ÷ DAU

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PUUをDAUと課金率に分解

あくまで課金してくれた人数の割合を見るだけなので、この指標自体は課金者の課金額については何も語ってはいません。ですが、この課金率という指標を用いるメリットとして、比較の容易さ が挙げられるかと思います。すなわち、実数値である PUU はそもそもの分母となる DAU の大小の影響を大きく受けることになり、プロダクト間の比較や、同じプロダクトの中での複数時点での比較がやり辛くなる場合があります。そういった際、課金率という指標はプロダクトのユーザー規模の大小に影響されない、プロダクトのマネタイズ力を見る指標の1つとして機能させることができるのです。

もちろん、厳密に言えば課金率という指標は分母となる DAU のセグメント構成 (ヘビーなユーザーが多い、ライトなユーザーが多い) によっても影響を受けるため、100% プロダクトのマネタイズ力をピュアに表現しているものではありません。また、プロダクトの運営において重要なのは課金していただけたか否かという0 / 1 の指標ではなく、課金額の分布 である、といった考え方もあります。ただし、それを話し出す基本の範疇を超えてしまうため、詳細は別の記事に譲りたいと思います。

 

おわりに

今回は最も基本的な KPI である 5つの KPI について見てきました。ゲーム運営の現場では日々これらの数字を追って現状を把握するとともに、これらの数値を基準に行った施策の振り返りが頻繁に行われています。

もちろん、現場で使われている KPI はもっとたくさんありますが、ただ何でもかんでも数字を見ればいいのではなく、その数字が KGI にどうつながるのを意識し、その数字がどう変化すればどういうことが言えるのかを意識しつつ、運営を行っていくことが重要なのは言うまでもありません。

 

バックナンバー

スマホゲームの基本KPI -1. DAU, PUU, ARPU, ARPPU, 課金率-

スマホゲームの基本KPI -2. インストール数, NUU-

スマホゲームの基本KPI -3. RR

スマホゲームの基本KPI -4. RR変化率-